ジョブズに学ぶ、半径5Mのものづくり
まず「自分たち」を想像して、ものをつくった。
デジタル音楽市場から携帯電話市場へ。携帯電話のすべてを変えてしまうほどの革命をおこした「iPhоne」はどのように生まれたのか。
■「今日、われわれは電話を再発明する」
スティーブ・ジョブズは数々の「世界を変える」製品をつくり上げていますが、なかでも最大のヒットであり、その後のアップルの成功を決定づけたと言えるのがiPhоneです。2007年1月、恒例のイベントであるマックワールド・エキスポに登壇したジョブズはiPhоneについてこう紹介しています。
「今日、われわれは電話を再発明する」
当時のアップルはデジタル音楽市場を支配しており、さらに超巨大市場とも言える携帯電話市場にそれまでとはまったく違うiPhоneで参入、「すべてを変えてしまう」ほどの革命を起こすことになったのです。
きっかけは拡大を続ける携帯電話市場への危機感でした。日本でも「写メール」が大流行しましたが、携帯電話にカメラが付くことでデジタルカメラの市場が打撃を受けたように、携帯電話に音楽プレイヤー機能が付けばアップルのiPоdも大きな影響を受けることになります。
どこかの企業に市場を食い荒らされるぐらいなら、自分たちが優れた製品をつくって自分たちの市場を食い、さらに大きくする方がいいというのがジョブズの考え方です。そこから出てきたのが携帯電話市場への参入ですが、それを後押ししたのが「究極の消費者」であるジョブズの既存の携帯電話に対する大いなる不満でした。