クビか移籍か。契約から見る鹿島が「ファミリー」たるゆえん【岩政大樹の現役目線】
鹿島アントラーズはなぜ巨大戦力ではないのか
■鹿島が「ファミリー」を感じさせるチームである理由
こうした面にデリケートに対応していたのが、僕の古巣、鹿島アントラーズです。今年も確か一人たりとも「契約非更新」とは発表せず、いなくなる選手も「移籍」という形になってから発表していました。
鹿島だからできる、と言われればそうなのかもしれませんが、こうした対応に選手たちは「ファミリー」であることを感じるのです。鹿島には一度でも、鹿島を「自分のチーム」として選んでくれた選手を大切に扱う、という今や不文律のようなものがあるので、選手たちに極めてきめ細かい対応がされています。
チームを退団する選手にはできるだけ移籍先を見つけた上で「移籍」という形に見せ、退団したあともいつまでも気にかけてくれます。スカウトの方なども入団させたら終わりではなく、入団後もうちの両親に事あるごとに連絡をくださり、退団したあともいつまでも関係が続いています。
そのための「戦力は厚すぎず、薄すぎず」なのでしょう。クラブでは、手当たり次第選手をかき集めるのではなく、「今いる選手たちを一番に考えること」が徹底されています。
契約交渉のときによく聞かされていました。僕は大体、お金の話より次の年の構想の話を伺っていたのですが、そのときに「今いる若手が20%伸びれば、それが補強になる」と。つまり「外から選手を取ることだけが補強ではない」。
「なるほど」と思いました。例えば、三連覇の始まりとなる2007年のシーズン当初は、浦和レッズやガンバ大阪の方が充実した戦力を有していたと思います。しかし、終盤になってチーム力を高めた僕たちは一気の9連勝で逆転優勝を果たし、そこから史上初に向かうロードを進み始めました。
そうした経験から、僕は常にチーム内のバランスを意識するようになりました。決して偏ることなく、ベテランと中堅と若手がそれぞれの持ち場で躍動するチームこそ強い。そう考えると、僕が30歳を過ぎたあたりから、鹿島はベテラン勢が多すぎる構成になっていっている気がしていました。