戌年に因み銚子電鉄に乗って犬吠埼へ
1日乗車券で小さな旅路
10分足らずの滞在時間で折返し、銚子行き電車は犬吠駅に停車。今度こそ下車した。
南欧風の駅舎内には売店や写真ギャラリーがある。戌年を記念して「戌年」と大書された硬券のきっぷを購入したが、記念入場券でも記念乗車券でもないようだ。きっぷもどきの券といったところである。弧廻手形には銚子名物濡れせんべいの引換券が付いているので、売店で1枚いただいた。さっそくベンチに腰をおろしてお茶とともに試食。休憩後、いよいよ犬吠埼目指して歩き始めた。
外は寒いかと思ったが、それほどでもない。風が遮られる崖沿いの場所は陽だまりとなって暖かかった。数分で犬吠埼に到着。まずは、俳人で小説家だった高浜虚子の句碑が目に留まった。「犬吠の 今宵の朧 待つとせん」。夕方までは数時間もあるので、虚子のようにのんびり岬で月を待つ気はない。虚子は人生の後半を鎌倉で過ごしたので、銚子には旅で訪れ、そのときに詠んだ句とのことだ。句碑の近くからは、大海原と崖の下の岩礁が見える。押し寄せる波がごつごつした岩にぶつかって砕け散る様子を見ていると時間が経つのも忘れてしまいそうだ。もう少し暖かければ、虚子のような心境になれるかもしれないと思う。
観光シーズンではないので、人影もまばらで、シャッターの降りている店もある。夏場の賑わいが嘘のようだ。灯台は以前2回ほど上ったことがあったので、今回は下から眺めるだけにして付近を散策したにとどめた。数年前の大震災で崖が崩れて危険な個所があり、立ち入り禁止になっている。東北の被害が大きく報道されているが、このあたりも被災地であることを忘れてはならない。