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物忘れより困る「認知症」の症状3つ

【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第十一回

記憶障害は、テレビドラマで知っていたけれど…

連載「母への詫び状」第十一回〉

 認知症について基礎的な知識もないまま、認知症の父と暮らすことになった介護初心者が、どんなことを感じたか。あくまでも、ぼくの父の個人的なケースと前置きをした上で、記してみよう。

 そもそも認知症は、日によって症状が大きく違う。これは実際に患者である父と接するまで知らなかったことだ。

 まず、ぼくを息子と認識できているかどうかが、日によって違う。息子とわかっている時もあれば、わかってなさそうな時もある。

 わかっていると思っていたら、どうやら息子ではなく、自分の弟と認識していたようだった時もある。何十年か昔に戻った状態になることがたびたびあり、そうすると目の前にいる男が年齢的に息子のはずはなく、弟であるほうが辻褄は合う。

 もっと言うと、うたたねの前後でも違う。

「おお、二郎、いつ帰って来たんだ」

 うたたねから目覚めた父が、ぼくを見てちょっと驚く。あれ、さっきはわかってなさそうだったのに、今は息子を認識している。この逆パターンも含めて、そんなことがよくあった。うたたねの前と後で、普通のおじいちゃんと認知症の患者が入れ替わる。

 ただし、母が入院中なのは何度話しても理解できないようだった。

「おかあちゃんはどこ行った」

 同じ質問が、繰り返し飛んでくる。今は病気で入院しているからしばらくいないよと、何度説明しても同じことを聞いてくる。多い時は3分おきくらいに。

 こういう記憶障害のような症状は、父と接する前から知っていたから、面食らいはしなかった。テレビドラマに出てくる認知症の老人はたいてい、この〝物忘れの激しいお年寄り〟の延長として描かれる。

 でも、現実の認知症はもっとハードだ。

 

次のページでは本当に困った症状とは?

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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