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「サン・ジョルディの日」はなぜバレンタインのように定着しなかったのか

キーワードで振り返る平成30年史 第11回

恵方巻きとサン・ジョルディ
~平成3年(1991)〜 ~

illustration:TADASHI SATO

 バレンタインとともに2月を代表する行事が節分。昭和の子どもたちは幼稚園や保育園、さらには学校で鬼のお面を作り、普段は見慣れない升に入った豆をまいたりまかれたりするのが定番だった。平成に入ると節分の風習に新顔が入ってくる。今や実施率において豆まきをも上回るほど定着してしまった新顔の名は恵方巻き。元々は関西の文化だったと言われる。24時間働いてビジネスチャンスを伺いギラギラしていた当時の日本の商人たちが、これをほっておかなかったのも自然なこと。かくして平成10年にはコンビニ最大手が全国展開に大々的なキャンペーンをうち、恵方巻きの習慣は見事全国に定着した。

 土用丑の日のうなぎ、バレンタインデーのチョコレート、さらにはホワイトデーなる新たな記念日まで生み出してしまった商魂たくましきジャパニーズアキンド。だが、彼らの手を持ってしても普及させられなかったイベントも有る。それがサン・ジョルディの日。
 こちらは現在独立を巡って注目を集めているスペインはカタルーニャ地方発祥。元々はキリスト教の聖人サン・ジョルディの命日である4月23日に男女が赤いバラを贈りあったのがサン・ジョルディの日。ところがこの日はスペインが誇る大ベストセラー『ドン・キホーテ』の作者セルバンテスの命日でもあることから本の日ともされる。そこからバラだけでなくいろいろな生花や本を贈り合う風習に発展。

 
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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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