神の化身の導きで作刀?「三日月宗近」「小狐丸」を作った三条小鍛冶宗近
発売中!『歴史人』3月号の特集は「日本刀大図鑑」
天下五剣の中の一振り、「三日月宗近」など、名だたる名刀を生み出した刀匠、三条小鍛冶宗近。その作品はわずか五振りと伝えられる。伝説の刀匠とはどのような人物なのだろうか。「歴史人」3月号から、その一部を紹介する。
「名を馳せた名工たちの中でも、素性が不明なものの一人に宗近がいる。彼の作品には年号を切ったものが現存しないが、平安時代中期の刀工であることだけは確かなようだ。さて、宗近の作刀に“小狐丸”がある。謡曲『小鍛冶』でその名を馳せた刀である。
あるとき、帝にお告げがあり、宗近に刀を打たせよと命じた。そのことを公卿から申し受けた宗近であったが、恐縮しつつも受けたまわった。とはいえ帝の刀である。どうしたものかと悩む宗近が思案しながら伏見稲荷の参道を歩いていると、いずこからともなく童子が現れた。そして天上より宗近に刀を打てとの言葉を伝えた。不思議に思った宗近は、童子に身元を尋ねたが、その姿は消えるようにその場からいなくなったという。宗近は、この童子こそ、狐の化身に違いないと思った。すると、体の中からみるみる自身が湧き上がり刀を打てたという。こうして打ち上がった刀こそ小狐丸なのだ。
時を経て、秀吉が藤原姓を名乗ることを望んだ際に、近衛家の近衛前久は了承したという。ところが九条稙通は、藤氏三宝が九条家に相伝することを理由に拒否する権利があるとして、実現しなかった。その三宝のひとつが、小狐の太刀・小狐丸だ。
出生など不詳とされることの多い宗近では有るが、謡曲にまで登場し名刀工として名を馳せたことは疑う余地のないことなのである」(文・山河宗太)
謎に満ちた名匠のひとりである。