聖母マリアの服は決まっている? 絵画の“約束事”とは【美術鑑賞のツボ/後編】
美術館賞を楽しむための5つのツボ②
◆西洋画にも日本画にもある、おなじみの人物や約束事
西洋絵画は聖書を題材に描いていることが多く、イエスや聖母マリアなど頻繁に登場する人物も多い。その場合、個々に特別な意味を持たせていない限りお約束のスタイルで描かれている。
「例えば聖母マリアは赤い服に青いマントを羽織り、洗礼者ヨハネは手に十字架が付いた杖を持っています」と佐藤さん。また、神話が題材の場合は、ヴィーナスにはよくバラが描かれるなどの約束事があるのだとか。
また西洋絵画だけではなく、日本絵画や中国絵画にもこうしたお約束はあると佐藤さんは話す。
「例えば中国唐時代の風変わりな隠者だった寒山と拾得は、水墨画から浮世絵まで数多く描かれました。巻物を手にしているのが寒山で、箒を持つのが拾得という目印があります」。
さらに同じテーマでも作者によって作風が異なるのも興味深い。
「聖書にある『受胎告知』がテーマなら大天使ガブリエルの持ち物に百合はお約束ですが、構図や表情、色使いなどはそれぞれ。そこから作者の意図を推測するのも楽しいです」。
こうした知識を深め、より楽しく絵画鑑賞するためには、常設展へ足繁く通うことがおすすめだ。
〈雑誌『一個人』2018年3月号より構成〉