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【過去最低の採用倍率】なぜ「教員になりたい」人が減少しているのか

第65回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

待遇の改善が必須

 教員の人材確保が問題になったことが過去にもあった。好景気で人材が一般企業に流れたためだ。
 その対策で制定されたのが、1974年2月に公布施行された「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教員職員の人材確保に関する特別措置法」、いわゆる「人材確保法」である。

 人材確保法は教員給与の抜本的改善を計画的にすすめるためのもので、3次にわたって合計25%の引き上げを行い、一般公務員より優遇されることになった。つまり、給与面で優遇することで教職の魅力を引き上げ、それで教員志望者を増やそうとしたのだ。
 この人材確保法を実現させたのは自民党の文教部会で、当時の田中角栄首相を説き伏せて法律を成立させた。そこには教員の待遇を引き上げることで、教員を日本教職員組合(日教組)から引き離し、日教組を弱体化させるという「目的」があった。
 ともあれ、教員志望者を増やすためには「待遇向上が一番」という発想があった。

 その発想が、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン」には欠けている。プランのなかには、「勤務実態調査を踏まえ処遇の在り方などについて検討」という項目があるが、処遇を引き上げるとは書かれていない。検討した結果、処遇の引き上げは必要ないとされる可能性も含まれている。
 しかも、その「検討」の開始も2022年度とされている。22年度になって検討を始めるわけで、いつまでに結論を出すとは決められていない。かつての人材確保法にくらべて、かなり腰の引けたプランだと言える。
 人材確保法で実施された教員の優遇措置は、その後に一般公務員の給与引き上げなどがあって、現在は優位性がなくなっている。人材確保法の発想に立ち戻れば、優遇措置を優先すべきではないだろうか。それを先延ばしし、消極的姿勢しかみせていないのが今回の文科省のプランなのである。

 これで教員志望者が増え、採用倍率を引き上げることにつながるのだろうか。
 文科省が財務省を説き伏せた35人学級の計画がすすんでいけば、さらに教員不足は深刻化していく。それを、今回の文科省のプランで補うことができるようになるのか、大きな疑問が残る。

 

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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