芸術家たちに愛される存在、「猫」と触れ合える美術館
日本の美術館が10倍楽しくなる話③
◆本物の猫に出会える美術館も
パブロ・ピカソやサルヴァドール・ダリなど、芸術界の巨匠には、愛猫家が多い。日本でも、江戸時代に活躍した浮世絵師、歌川国芳の作中には、さまざまな猫たちが登場する。いつの時代も、猫たちは世界中の芸術家たちを魅了していることもあってか、猫をテーマにした美術館が各地に存在している。
日本で生まれた猫の芸術作品といえば、招き猫を思い浮かべる人もいるかもしれない。日本にはこの招き猫をテーマとした美術館がいくつかあることをご存じだろうか。
岡山県岡山市の「招き猫美術館」は、日本初の招き猫を専門に扱ったミュージアム。和紙や石、ブリキなど、日本各地のさまざまな招き猫をコレクションしている。
「猫町」としても知られる広島県尾道市にも、「尾道イーハトーヴ・招き猫美術館in尾道」が。昼寝したり散歩したりする猫たちに会える“猫の細道”を抜けたところにある、招福絵師・園山春二が作った招き猫の美術館だ。なかには、天皇家からいただいたという招き猫もあるのだとか。
博物館ではあるが、やきものの里として知られる愛知県瀬戸市にも「招き猫ミュージアム」がある。招き猫愛好家たちが交流する「日本招猫倶楽部」の世話役、板東寛司・荒川千尋夫妻の個人コレクションを展示。その数は数千にものぼるという。
日本にはほかにも、猫とアート、この両方に触れられる美術館がある。それは、千葉県匝瑳市の「松山庭園美術館」だ。芸術家の此木三紅大のアトリエであるが、名画コレクションや茶道道具などが展示されている。茶室などもある庭園も見事で、1日中過ごしたくなるスポットだ。
庭園があり、芸術家のコレクションなどを公開する美術館、というだけならば、それほど珍しくないと思うかもしれない。しかしここには、多くの“リアル猫”が存在し、庭園だけでなく館内をも自由に闊歩しているのだ。絵画を鑑賞しているうちに、気づけば足元に猫が……なんて、美術館に来ているとは思えない体験もできてしまう。
大人のたしなみとして、美術館に一度は足を運びたい。そう思っていても、芸術のことはよくわからないし、行っても楽しめないのではないか。ビギナーはそう思ってしまいがちだが、こうして猫に会いに行くことをきっかけに、アートに触れてみてはいかがだろうか。
雑誌『一個人』3月号では、「日本の美術館が10倍楽しくなる話。」という特集を展開している。美術鑑賞のポイントなども掲載しているので、これも合わせてチェックすると、さらに美術館での楽しみ方がわかってくるのではないだろうか。