特別な色とリズムが生まれる場所 沖縄のクリエイターに会いたい。【植物採集家の七日間】
「世界のどこかに咲く植物を、あなたの隣に。」連載第3回
■グリーンウォッシュ、植物で誤魔化さないで
アトリエに飾られた数十着のtouch me notの服。これらは中嶋さんが寸胴(大きな鍋のこと)で煮込みながら1着ごとに色を変化させ、100ℓ程度の水で染色している。水量は一般的なお風呂の約半分と少量だ。染料は徐々に服に吸収されていくため、最後に残った水は庭に撒いたとしても植物が枯れないくらい、環境負荷の低い状態だそう。もちろん、衣類に残った染料も人体への安全に配慮されている。
私は今、研究チームとプロジェクトの調査・開発を進めているが「エコアイテムの市場の怪しさ」に驚いている。グリーンウォッシュやSDGsウォッシュなど、世の中にいいことを謳っていても実態としては環境に悪影響を与えていることは多々ある。植物由来成分でも肌に刺激が強かったり、アレルギーの出やすい成分もあったり、大規模伐採により環境破壊に加担している可能性もある。本質的に何が人間と地球環境にとって良いかは熟考し、多角的、中長期的に考えなければ判断はできない。
中嶋さんは自分の目で確認し、考えて、人々に服を届けている。売上げの一部を保護動物の活動支援に寄付し、お迎えした元保護犬ルナちゃんと一緒に創作活動を行っている。服を作ることが軸となり、touch me notというブランドを育てていくこと自体が誰かのためになり、中嶋さんの人生観とリンクしている。自分のできる範囲で世界を変える、美しきアントレプレナーだ。彼女の服を着ると、私はいつも等身大の自分に戻れる気がする。
■自然との距離感 じっくりと待つ力が美しさを生む
アクセサリー作家 churaumiの清水さんと空間デザイナーの小池さんご夫妻にお会いすると、自然との距離について考えさせられる。東京で活躍されていたお二人は、清水さんの堅い決意で沖縄に移住された。お店には国内外の観光客も多く訪れ、リピーターも多い。店内には品よく作品が置かれており、どこかに自然を感じさせる。珊瑚や真珠を使い、素材の形を生かした作風が影響しているのだろうか。
私はピアスの穴を開けていないので、いつもイヤリングを購入する。樂園百貨店の立ち上げで毎月通っていた頃には、「古長谷さんが気に入りそうだな」と清水さんが考えていたものを、案の定一目惚れして購入することも度々あった。
イヤリングは左右ペアで1つになる。淡水パールが好きなのだが、本来同じ形のものは出てこない。清水さんは根気強くパーツをストックし、ある日の仕入れでペアとなる子を出迎えた時に、ようやく作品として取り掛かることができる。
今の技術があれば似たようなパーツを人工的に作ることもできるかもしれない。それでも、じっくりと時間をかけ、その瞬間を待ったものにしか宿らない空気を感じる。待つことのできる空気、待つことを喜ぶことのできる時間軸、というのは沖縄の美点である。