「安倍晋三は狂気の人間だが政治家だった」理由とは
「副島隆彦×適菜収」異色対談第1回
■副島隆彦の流儀
副島 私も国内政治予想は外してるからもうやらない。私は本を書いて味方勢力ゼロでやってきたでしょう。真実を暴くとそれだけですから。トランプが大統領になるのを予言したのだって、当たるか外れるかですから、当たれば田舎の経営者みたいなのが、ざわざわと「そういう評論家がいたのか」という形で拡まる。それがまた新しいお客さんになってくれる。
適菜 副島さんの予言の的中率はどのくらいなんですか?
副島 8割は超すんじゃないんですか。イランとイスラエルがミサイルを打ち合うという予言も、簡単なことで、極東はもう広島と長崎をやったから、今度は中東でやるんです。こういう単純な原理だから、そういう話をすると佐藤優さんはビクッとするんですよ。ハンチントンの本は『文明“間”の衝突』と訳すべきだったんですよ。これからそれが起きるんです。それで一発で30~50万人死ねばお互い嫌になってやめますよ。人類はその程度の生き物です。今日はこれだけは差し上げようと思って持ってきた。おそらく私が死んだ後一番評価されるのはこの本です。『人類の月面着陸はなかったろう論』。
適菜 陰謀論とかトンデモ本だと話題になった書籍ですね。この予言は当たったんですか?
副島 まだわからないよ、出してから7~8年経つから、もう一回行ってこいと言っても、喧嘩にもならない。一生懸命私なりに調べて「何が月の石だバカたれが。36万キロ、どうやって帰ってくるんだ」と。アインシュタインが「バカ言え、宇宙なんて結局わかんねえよ。科学という名の宗教だよ」と。このセンスが私のニーチェ観だね。科学という宗教で国民を洗脳するなと。合理主義でやって、わからないことはわからないと言えと。「ここまでわかっています」というのが本当のサイエンティストなんだ。初期のサイエンティストは坊主です。コペルニクスもそうでしょう。私もそういうタイプの人間なんです。
適菜 橋下徹と維新の会はこれからどうなりますか?
副島 橋下君の資金源は何か。笹川陽平の家に出入りしているし。統一教会なんですよ。橋下は日本のムッソリーニになると思っていたけど、いろいろボロが出すぎて、もう無理です。ローマ法王もムッソリーニを殺した。東京進軍は無理でしょう。
適菜 橋下は官邸とべったりでしょう。
副島 菅がずっと応援していたけど、今、菅の力はそれほどない。組織団体の親分であるという自覚がないから、子分とすぐにケンカする。
適菜 橋下の原動力は、日本に対する恨みではないかと思います。だから世の中に蔓延る破壊願望のようなものと一時期うまく結びついた。文楽もやめてしまえ、大阪市も破壊して特別区に分断してしまえと。
副島 日本のきちんとした保守の人たちは、そう思っていますよ。私は、そういう人たちに期待しないといけないと思っている。
適菜 副島さんはニーチェとリバータリニズムを絡めて書いていらっしゃいましたが。
副島 リバータリニズムは新しい思想です。元々は急進派左翼だった連中も入っている。反官僚、反国家、反税金、反過剰福祉。あと、反海外侵略なんです。外国の問題に手を出すな。それがリバタリアンです。その要素がニーチェの中にあった。
適菜 保守主義と自由主義は、根本的な部分では水と油の部分もあるんですけど、歴史的な経緯としては共闘、共存していた時代が長いわけですよね。エドマンド・バークのような保守的な要素をもつ自由主義者もいたし、左翼系の自由主義者もいた。近代的理念により基礎づけられている人たちですね。チェスタトンがニーチェを批判したのも、カトリックの自由主義者がニーチェを理解できなかったというだけの話ですよ。ニーチェは道徳の破壊者と言われますが、キリスト教道徳を批判したのであって、むしろ本当の意味での、生を肯定するという意味での道徳の復権を唱えている。そういう文脈が全部吹っ飛んでしまっていますね。
副島 リバタリアンは、倫理道徳は個人に所属するものであり、国家に所属するものではないと考える。だから、倫理道徳を個人に押し付けるなと考える。リバタリアンは開拓農民の思想から生まれたんですが、面白いことに保守なのに人工妊娠中絶を認めるんです。他の保守はカトリックにやられてしまっているので、強姦されてできた子供でも中絶は許さないみたいな激しいのもあるが、リバタリアンは倫理道徳の国家、あるいは宗教団体を嫌うんです。だから、リバタリアンは反カトリックですね。
適菜 なるほど。
(※対談第2回へつづく)
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