「アンダークラス」の恐怖。救いはあるか。
【階級社会】を橋本健二氏が徹底解説2/2
■ピラミッドの最下層にいるアンダークラス
トオル…日本は非正規労働者が増え、階級と階級との違いがハッキリしてきたということだけど、具体的に階級ってどんなものがあるんですか?
橋本(健二:社会学者。『新・日本の階級社会』著者)…古くからある区分で、資本家階級(経営者・役員)、新中間階級(被雇用の管理職・専門職・上級事務職)、労働者階級(被雇用の単純事務職・販売職・サービス職・その他現場の労働者)、旧中間階級(自営業者、家族従業者)という4つの階級が存在します。加えて今の日本では、労働者階級の中で格差が広まりその最下層に「アンダークラス」という新たな階級が出現したのです。
シズカ…「アンダークラス」…なんだかどきりとする名前だわ。
トオル…ええと、先生の本『新・日本の階級社会』によると、アンダークラスの特徴「非正規労働者」「平均個人年収は186万円」「男性の未婚率が66.4%」だって。僕は正社員だけど、年収はそれよりちょっとだけ多いくらい。結婚もできてないや。悲しいけど自分自身「アンダークラス」な気もします。。
橋本…確かに“グレーゾーン”にいる方もいます。必ずしも非正規だからアンダークラス、正社員だからそうではないとは言えない。たとえばブラック企業でこき使われて働いている正社員はいつ退職に追い込まれるとも限らない。彼らはアンダークラスとの境目のグレーゾーンにいると言えるでしょう。
シズカ…ちなみに「アンダークラス」っていう概念は海外にもあるんですか?
橋本…欧米にもあります。アメリカではもともと労働者階級の中で、少数民族と白人労働者間の格差がかなりあり、一括りにすることが難しかった。シングルマザーの貧困も、深刻でした。そこで少数民族の貧困層などを指す「アンダークラス」という言葉が昔から使われてきました。しかし格差がさらに増大すると、今度は白人男性の労働者でもの中にも格差が生まれて…と、少数民族だけの話ではなくなりました。その後、格差が同じように拡大していった先進国でも同様の存在が指摘されるようになったのです。
シズカ…「アンダークラス」はアメリカとかフランスとか、大国に現れやすいのでしょうか?
橋本…そういう面もありますが、ヨーロッパ諸国は労働法制がかなり厳しいので、実はそれほど深刻ではありません。最低賃金は日本よりずっと高く、社会保障制度もしっかりしています。仮にクビになったとしても当面は生活に困りません。ところが日本やアメリカの場合は全く違います。
シズカ…やっぱり日本も国が労働者を守る制度を作ってほしい! 本当にお願いします