最強のエンターテイメント「菅義偉政権」で総理の菅さんの影が薄い件で
【連載】山本一郎「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」
■「揃いも揃って、おもしれぇ面しやがって」
他方、総理就任直後の菅義偉さん、みんな忘れているかもしれませんが「日本の通信会社の料金は高い」と、通話やデータ通信のようなインフラ代金が国民にとって負担となっていて可処分所得を減らしているという持論を展開していました。武田総務大臣に通話料金の値下げを強く求める指示を出していた菅義偉さんの横で、NTT法改正を控えるNTTドコモが一見して大盤振る舞い的な安いプランを提示して通信業界が右往左往したのも良い思い出なのですが、これから人口減少が進む日本で、僻地や山間部、離島まで津々浦々にデータ通信を行き渡らせるようインフラ投資を強いる仕組みをNTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンク、楽天モバイルの各社にバラバラに求めるのは果たして効率的なのでしょうか。
さらには、同じく人口減少が著しいところで47都道府県におのおの許認可を出したテレビ局やラジオ局が割拠しているのは、本当に我が国の通信・放送産業においてサステナブルなのかということも考えていかなければなりません。
そういう世界的にはデータエコノミーの勃興でGAFAやマイクロソフトやアリババテンセントなどの中華勢のプラットフォーム事業者との戦いがおき、国内では人口減少・地方経済縮小で放送・通信インフラの再編待ったなしという超大事な節目にある総務省の真ん中で、7万円の会食で大騒ぎになり、国会でゴリゴリと追及され、あらゆるものが見事に止まる我が国固有の伝統行事が繰り広げられているというあたりに危機感を抱かずにはいられないわけですよ。
全体的にすげーヤベぇ事態になりつつあるのに、とんでもねえ風体の長男の写真が文春にて報じられたのを見て「揃いも揃って、おもしれぇ面しやがって」とかいうリヴァイ兵長の台詞が思わず口から出てしまった人も多かったんじゃないでしょうか。そうでも言ってないと、心の平静が保てない気がします。
文:山本一郎