緩やかに沈んでいく「茶どころ日本一」の静岡 勇気をくれるのは、いつも植物たち。【植物採集家の七日間】
「世界のどこかに咲く植物を、あなたの隣に。」連載第4回
■迷いながらも戦う理由。味わうだけではない、お茶の可能性
「自分が良いと思ったことを丁寧に伝えていきたい。 自分の人生をかけて、確かなものを作りながら。」
石鹸づくりを営むニコハンドソープ、望月さんの言葉は石鹸への愛と信頼に溢れている。
石鹸の製品原料であるオイルや植物には、本来そのままでも人に有用な成分を含み、役に立つ働きをするものがある。ニコハンドソープの石鹸には酸化防止のため、チャカテキン抽出エキスが入っている。お茶は飲むためだけではなく、石鹸の品質保持にも活用されているのだ。
私は緑茶の緑色にも着目した。色彩療法、カラーセラピーをヒントに緑茶の粉末を石鹸に入れ、柔らかな緑茶の石鹸を開発した。色は人の気持ちに大きな影響を与える。白いシャツは清潔感のある爽やかな印象を作るし、鮮やかな黄色のひまわりは夏のエネルギーを感じさせ、森林の緑は清々しく穏やかな気持ちにしてくれる。毎日手に取る石鹸に天然の色素を使うことで、安心しながらも心躍る瞬間ができないかと考えた。そこから考えを発展させ、賞味期限直近のため商品として販売できなくなったお茶を引き取り、草木染めの原材料として再利用した。
売上、生産量、効率……企業として存続していくためには沢山の指標があり、本当の目的を見失わないことは難しい。作り手の揺らがない理想と奮闘の日々が、私たちの毎日を支えてくれているのだ。
大切な思いや技術を守りつつ、人々のニーズに合わせ、新しい植物の可能性を検証する。私は植物採集家として、丁寧にお茶の可能性を育てていきたい。
撮影協力
藪の家せっけん合同会社:望月 秀樹 氏
茶楽山梨商店:山梨 裕介 氏
毎週月曜配信、植物採集家の七日間。
次回は植物採集の旅、沖縄編第五回。
「訪れたい場所は私がつくる。建築とアートと植物。」