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もう銀行に頭を下げなくたってお金は借りれる

【銀行消滅】を岡内幸策氏が徹底解説2/3

■銀行=お金を預けて手数料を取られるだけの場所になる?

シズカ…日本の大手銀行が追い詰められたのは、金融サービスの変化への対応が遅れたことが原因なんですね。

岡内…メガバンクの戦略のまずさです。彼らは日本の中小企業ではなく、海外にもっと目を向けてビジネスをするべきでした。スタートアップ企業の発掘・支援も遅れています。“目利き”が増えていません。

シズカ…海外って、やっぱりアメリカですよね。

岡内…と思いますよね? それが大きな間違い。日本人はなにかとすぐアメリカに意識を向けがちですが、日本の多くの銀行は、銀行業務のほか、証券・生損保といった金融の幅広い業務を顧客に提供する「ユニバーサルバンク」です。証券引き受けや企業買収(M&A)業務を行う「インベスメントバンク(投資銀行)」を目指すアメリカとはそもそも形態が違いすぎるのです。ワンストップと言っても、1人で対応できる人材は限られています。

トオル…じゃあ、海外のどこに目を向ければいいんですか?

岡内人口6億人のASEAN(東南アジア諸国連合)です。アメリカも重要ですが、中国やインドを含めたアジア諸国の経済成長は著しく、とりわけASEANの金融は大きく発展する見込みです。中国主導のアジアインフラ投資銀行が設立されたように、インフラ需要は旺盛です。新興国や中進国の勢いをもっと取り込むべきです。

シズカ…たしかに、ベトナム、フィリピン、インドネシアって、今勢いがあるわ。

岡内…フィンテックやブロックチェーンの導入もしかりですが、新しいサービスや選択肢に対する決断力が、銀行の上層部には足りません。特にシステム部門。多くの人は知識がなく、失敗を恐れて踏み切れない。

シズカ…数百から数千億単位のお金が動くことだし、慎重になってしまう気持ちもわかる気がします

岡内…でもそれでは前に進めない。いつかは今のシステムを放棄する時代がくるんですから。変わることができなければ、銀行は本当にただお金を預けるだけの場所になってくるでしょう。しかもこれからはわれわれが「保管料」をとられるようになる可能性もあります。

トオル…え!保管料!?

岡内最近、メガバンクを中心に「預金口座維持手数料」を徴収しようという流れがあるんです。銀行口座の維持費を預金からいただこうと。いかにいま銀行が、利益に対して貪欲かわかりますよね。何か素晴らしいサービスがあり、それに対する報酬なら納得がいきますが、顧客無視の動きは結局、自分の首を絞めることになるでしょうね。

シズカ…そんなことになったら、ますます「銀行」という場所の存在意義が問われそうですね

岡内…大企業など法人は困ってしまいます。個人では、維持費を払うぐらいなら銀行に預けなくてもいいや、という人も出てくるでしょう。

トオル…タンス預金にしちゃうかも!

岡内・・・その前に電子マネーは銀行の特権ではありませんから、預金の大移動があり得ます。今はマイナス金利で邪魔な預金も、いざ必要になったときは簡単には戻ってきません。また、2017年4月の改正「資金決済法」で銀行免許がなくても100万円以下の送金が可能になりました。手数料の高い銀行離れが始まっています。

トオル…もう時代はキャッシュレスですよね。電子ウォレットで事足りちゃうかも。銀行へ行く理由がなくなる! 

シズカ…トオルくん、私も…。

第3回
※第3回は15日(木)より公開!

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岡内 幸策

おかうち こうさく

ディー・ディー・マイスター代表取締役社長。1956年生まれ。神戸大学法学部卒。富士銀行(現みずほ銀行)を経て、不動産証券化・REITの資産評価、担保資産等の価値評価、コンサルティングを行うディー・ディー・マイスター(株)を設立。『証券化入門』『デキる銀行員は数字を超える』『不動産ファンド 危機の構図』(いずれも日本経済新聞出版社)ほか著書多数。


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