「旅立ちの日に」はなぜ卒業ソングの定番となったのか
キーワードで振り返る平成30年史 第12回
卒業ソング『旅立ちの日に』
~平成10年(1998)頃〜 ~
平成になって30回目の3月を迎えている。3月といえば、やはり思い浮かぶのは卒業。通過儀礼のないこの国の若者たちにとって卒業が人生の節目となる大きなイベントであるということは平成も昭和もかわらない。だが卒業にあたって挙行される卒業式、その様相は緩やかな変化を遂げている。
特にその最たるものが卒業生や在校生によって歌われる卒業ソング。かつては『蛍の光』や『仰げば尊し』、ちょっと物分りの良い先生のいる学校になると武田鉄矢がリーダーを務めた海援隊の『贈る言葉』などが定番だったが、いまやどれも古さを隠せない。『蛍の光』はもはや卒業ではなく閉店時間を知らせる音楽として認知され(正確にはそちらは『別れのワルツ』という曲なのだがメロディーは同じ)ている。今時蛍雪の功を実践するような苦学生もなかなか見られない。『仰げば尊し』は教師への恩を綴るその歌詞ゆえに、今なら「生徒が言い出すならともかく教師自らが押し付けるとは何事だ」などと炎上案件にすらなりうる可能性を秘めている。『贈る言葉』もそもそもがテレビドラマ『3年B組金八先生』の主題歌だったのだが、校内暴力はこうやってやるんだという見本を地方の中学生に示したドラマの主題歌を教師が選んでいたということは、冷静に考えるとお笑いのネタですらある。そんなこんなでこれらの昭和の定番曲は今やほとんど歌われなくなった。
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