ブロックチェーンが可能にする「法定デジタル通貨」
30年間でお金はこんなに変わった〈後編〉
■存在感を増す仮想通貨
近年の「お金」の進化と言えば、ビットコイン・仮想通貨について触れないわけにはいかないだろう。これらは法定通貨ではない、新たな「お金」の形だ。モノとしての実体はない。
ご存知の方も多いと思うが、ビットコインはサトシ・ナカモトと名乗る人物の論文をもとに作成された仮想通貨である。仮想通貨と呼ばれるのは、目に見える通常の通貨と違い、データでやり取りすることになる。そのため仮想(バーチャル)となるのだ。
さて、このビットコインが大きな注目を集める理由の一つが、ブロックチェーン技術が使われている点。ブロックチェーン技術とは、またの名を「分散型台帳技術」ともいう。データの履歴などをトランザクションといい、このトランザクションを複数まとめたものをブロックという。このブロックが鎖のように連なって保存されていることからブロックチェーンと呼ばれる。また、ブロックチェーンは一つのサーバーで管理されておらず、あらゆるユーザーのコンピュータに分散して管理されている。これはWinnyやShareなどで利用されたP2Pの技術を想像すればわかりやすいだろう。
反対に、法定通貨である日本円は日本銀行が発行・管理している中央集権型のシステム運用だ。そして、日本円の取引記録を記載した大きな取引台帳を日本銀行が管理しているとすれば、ビットコインはその取引台帳をネットワークに参加するユーザーのコンピュータに分散して管理していることになる。
中央で管理してくれる人がいない仮想通貨は信用が置けない気がする。しかし、むしろ分散することによって取引は可視化される。加えて、データの書き換えや二重払いも技術的にきわめて難しくなる。改ざんも基本的に不可能だ。
仮想通貨といえば、大手取引所のコインチェックから580億円相当の「NEM」が流出した事件が記憶に新しい。この事件を受け、仮想通貨のセキュリティに対する不安の声が一部であがった。しかし、これはあくまで取引所サービスとしてのコインチェックへのハッキングがことの発端。金融庁は仮想通貨の取引所に対して、「コールドウォレット」(必要なとき以外はネットにつながらない場所で保管するシステム)を推奨していたが、コインチェックは「ホットウォレット」(常時ネット環境につながっているシステム)を採用していたのだ。
また、この1件に関してはこれらのブロックチェーンの特徴によって、犯人の特定が困難になっている部分もある。匿名性も高く、海外では武器や薬物の取引やマネーロンダリングの手段として使われているケースもあるという。
功罪あるものの、このブロックチェーン技術は「インターネット以来の発明」と呼ぶ声もあるほどの大発明。適切に使えばとても便利に、そしてセキュリティーも担保されることは事実だ。