「BEST T!MES」連載30問30答、3月は宇野常寛さんを特集! 自ら企画ユニット『PLANETS』を主宰、近年はメディアでの活躍も増える中、評論家として最新作『母性のディストピア』が大ヒット中。多彩な活動を続ける彼の「素顔」に30の質問で迫ります。
彼らはこれからの日本を変えていく
気になる同業者はいないですね。ただ、同業者以外なら何人か興味がある人はいます。僕より少し年下なら、ブロガーのイケダハヤト。それより年下だとメディアアートの落合陽一とSHOWROOM代表の前田裕二。彼らは、これからの日本を変えていく人たちだと思っています。
イケダハヤトは、自分の生活自体や自分の人生そのものを、ちゃんと実験してコンテンツとして売っているじゃないですか。東京から高知市に引っ越して、今では山奥の限界集落に住んで発信している。そういう意味で、新しい物書きというか、オピニオンリーダーの雛形を作っていると思うんですよ。
落合陽一は、彼の研究コンセプト自体が、21世紀の社会というものに大きな意味を持つと思っています。しかもそれを、彼は自分の研究成果として言葉にして、啓蒙的に振る舞おうとしている。そういったところが彼を後押ししていきたいなと思う部分ですね。最近、彼の書籍がベストセラーになっていますが、実は、彼の最初の本をつくったのは僕なんですよ。今の彼ってかなり社会に調教されているんです(笑)。僕が出会った頃は本当にマッドサイエンティストっぽい青年で、「なんだこのヤバいやつは……」ということがきっかけで興味を持ったくらいでした。メディアで見る彼は最低限の社交性を身につけた姿なんです(笑)。
前田裕二とは、彼がSHOWROOMを立ち上げる前になんかの集まりで知り合って「面白い男がいるな」と思ったんです。映像産業や芸能産業というのは、古い体制のままで、20世紀までの形をいまだに続けているじゃないですか。まあ、エンタメ産業は20世紀に国内でドメスティックに進化してきたわけですが、彼はそういった業界をアップグレードしようとしている。どうアップグレードしていくか注目しています。彼は日本がすでに二流国になったという前提で、中国やアメリカ西海岸の動きを参考にやっていると思いますけど、彼が取り組んでいるのは僕のやってきた批評や対象としたジャンルでもあるので、より気になりますよね。
〈明日の質問は…… Q20.「引退を考えたことはありますか?」です。〉
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宇野常寛・著『母性のディストピア』
宮崎駿、富野由悠季、押井守--戦後アニメーションの巨人たちの可能性と限界はどこにあったのか?
宮崎駿論4万字、富野由悠季論10万字、押井守論10万字の作家論を中核に、アニメから戦後という時代の精神をいま、総括する。
そして『シン・ゴジラ』『君の名は』『この世界の片隅に』――現代のアニメ・特撮が象徴するさまよえるこの国の想像力はどこにあるのか?
『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』とその射程を拡大してきた著者の新たな代表作にして、戦後サブカルチャー論の決定版。