【2040年のモノ】EV化で、自動車産業はかえって衰退する
2040年の「自動車」を想像してみる〈後編〉
■水素自動車は普及するか
──やはり、世界的にも自動車のEV化の波は避けられないと。
松田:電気は風力、火力、水力、または回生エネルギーと、どんなものでも作れるというメリットがあります。もう一方で話題になっている水素は、燃料電池として使うには純度が求められ、現在99.9%ぐらいないとダメなんです。水素も何からでも作ることができますが、精製に別のエネルギーが必要でまだ開発の余地があります。
──電気の方がエネルギーとしてシンプルなんですね。
松田:しかし電気は損失が多いし、何かに変えておかなければならないのでバッテリーが重要になってきます。そのバッテリー自体は生産もリサイクルも大変で、そういう側面で言うと現状ではEVがエコかというと、そうでもない。リチウムイオン電池はレアメタルを使用しているし、電解液は硫酸を使っている。容量が大きければ大きいほど実は環境負担が大きいんですね。「ウェル・トゥ・ホイール(油田から車輪)」という考え方があって、原油産出からクルマが廃車されリサイクルされるまでに排出するCO2排出量を見ると、実はまだガソリン車が一番少なかったりするんです。
──つまり、実はエコロジーかどうかはそれほど問題ではなく、ビジネス上の駆け引きの方が大きいという側面もありそうですね。
松田:あとは目新しさでしょうね。自動車メーカーもそれを新たなビジネスチャンスと捉える部分もあって、一緒にEVと言っている部分もあるでしょう。もちろん大手メディアの作るムードもあると思います。電気自動車が現在、どういうレベルの商品なのかもよく調べないで世界に遅れるな、という論調もどうかと思いますが(笑)。そういう風潮に世界中のトップが流されている感じはしますね。
──そのあたりは、リアルユーザーの声が聞きやすいネット社会になっているんで、もっとみんな色々アンテナを張った方がいいですよね。
松田:現実に、もう少しガソリン&ディーゼルでもここまで燃費を良く、CO2排出を軽減できる、というマツダのように気骨あふれる自動車メーカーもいるんで、彼らには頑張ってほしい部分もあります。でも結局、日本には石油資源がないので、長い目で見て石油市場に振り回されない社会を実現する必要はあると思いますよ。