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日本に勝ちたい「ソ連」が考えたこと

アメリカを使って日本をたたき潰そう。シリーズ!インテリジェンス・ヒストリー「開戦に追い込まれた日本」②

満洲事変、シナ事変と中国大陸を巡って日米両国が対立し、ついに日米戦争に発展してしまった――。こういった歴史観には致命的な欠陥がある。日米開戦を引き金を引いたのはソ連だ。江崎 道朗氏が著書『日本は誰と戦ったのか』 の中で、ソ連の「漁夫の利」作戦を説明する。

■日本に仕掛けられた、漁夫の利を得る「秘密工作」

1943年テヘラン会談スターリン・ルーズベルト・チャーチル

 戦前は、シベリア・満洲で国境を接している日本は、ソ連にとって常に恐れと警戒の対象でした。

 日本側もまた、国境を接しているソ連を脅威と考え、満洲・朝鮮半島への「侵略」を計画しているソ連をいかに阻止するのかを常に考えていました。

 日本は、そのために満洲・朝鮮半島地域の軍備を充実させ、ソ連の侵略を未然に防ごうとしました。

 一方、ソ連は極東の軍備を充実させるだけでなく、「秘密工作」を仕掛けることを考えていました。その「秘密工作」とは、「アメリカを使って日本をたたき潰そう」という戦略です。自分たちの軍備を充実させて日本軍を打ち破るのは大変なので、日米両国の対立を煽【あお】って日米戦争を引き起こし、日米両国に互いに潰し合ってもらい、ソ連は漁夫の利を得ようという戦略です。

 漁夫の利とは「当事者同士が争っているスキに、第三者がなんの苦労もなく楽に利益をさらっていくこと」のたとえで、中国の古いことわざです。

 日本は真面目なので、軍事力を増強してソ連の脅威に立ち向かおうとしたのですが、ソ連は、秘密工作、謀略によって勝とうとしたわけです。

 

 その証拠も残っていて、たとえばソ連の指導者レーニンが一九二〇年十二月六日、「ロシア共産党モスクワ組織の活動分子の会合での演説」の中でこう主張しているのです。

1943年のカイロ会談(蒋介石、ルーズベルト、チャーチル)

 二つの帝国主義のあいだの、二つの資本主義的国家群のあいだの対立と矛盾を利用し、彼らをたがいにけしかけるべきだということである。(中略)
第一の、われわれにもっとも近い対立──それは、日本とアメリカの関係である。両者の間には戦争が準備されている。(中略)このような情勢のもとで、われわれは平気でいられるだろうか、そして共産主義者として、「われわれはこれらの国の内部で共産主義を宣伝するであろう」と言うだけですまされるであろうか。これは正しいことではあるが、これがすべてではない。共産主義政策の実践的課題は、この敵意を利用して、彼らをたがいにいがみ合わせることである。そこに新しい情勢が生まれる。二つの帝国主義国、日本とアメリカをとってみるなら──両者はたたかおうとのぞんでおり、世界制覇をめざして、略奪する権利めざして、たたかうであろう。(中略)われわれ共産主義者は、他方の国に対抗して一方の国を利用しなければならない。(『レーニン全集』第三十一巻、大月書店、一九五九年、四四四頁)

ソ連が狙った「漁夫の利」(日清戦争の風刺画)

 日本とアメリカの対立を徹底的に煽る。そうすることでアジアに共産国家を作ろうというのが、レーニンの世界戦略でした。

(『日本は誰と戦ったのか』より構成)

 

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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