【教員免許更新制度の今後】教員に必要なスキルは30時間では学べない
第68回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
■教員は自分たちで学習・適応できている
教員免許更新制度は廃止に向かっていくのだろうか。
安倍政権の「置き土産」とも呼ばれているのが、教員免許更新制度である。第1次安倍内閣のときに教育再生会議が提言し、2007年6月の教育職員免許法の改正によって実現した(導入は2009年4月から)。
改正実現直後の2007年(平成19年)8月28日に安倍首相が自身の体調悪化を理由に辞任を表明するなど、さまざまな経緯を経て2009年4月に制度はスタートする。
同年9月に政権交代をはたした民主党はマニフェストに「抜本的見直し」を掲げていたものの、結局は何の見直しもされなかった。それが、現在も続いているわけだ。
そもそも、なぜ教員免許更新制度は導入されたのか。導入を方向づけた中央教育審議会(中教審)の答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(2006年7月11日)は、教員免許更新制度を導入する「基本的な考え」として次のように述べている。
「教員として必要な資質能力は、本来的に時代の進展に応じて更新が図られるべき性格を有しており、教員免許制度を恒常的に変化する教員として必要な資質能力を担保する制度として、再構築することが必要である」
時代の変化の中で求められる教員の資質能力に応えるために免許更新が必要だ、というわけである。そのために、10年ごとの免許更新が義務付けられ、更新には大学で30時間の講義を受けることになっている。しかし、10年ごとに30時間受講すれば、時代に求められている教員になれるとは思えない。
教育現場は、日々といっていいくらいのスピードで動いている。
だからこそ教員は、多くの研修を積み重ねている。それに比べれば、10年ごとの30時間の講義がどれだけの意味をもつのだろう。
もし日頃の研修をすべて廃止して10年ごとに30時間の講義だけでいい、というのなら教員は喜ぶはずである。研修に割かれる多くの時間が節約され、教員の負担は大きく軽減されることになるからだ。
しかし、不安を大きくする教員も少なくないかもしれない。日々刻々と変わる教育環境のなかで教壇に立ちつづけるための知識などを、研修の場で吸収している教員も多いからだ。
つまり、10年ごとの30時間講義がなくても、それ以上の研修を教員は日常的に積み重ねているのだ。中教審が免許更新が必要とした理由など、教員は日々クリアしているのである。毎日のように免許を更新していることになる。改めて、それも10年ごとに更新する意味などない。
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