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30年前。自動車は若者たちの「居場所」だった

30年間で「自動車」はこんなに変わった〈後編〉

■携帯電話が自動車に取って代わった

 その流れが変わってきたのが携帯電話の台頭だ。最初「自動車電話」として79年に誕生したパーソナル通信機は1990年代に急速に普及して「ケータイ」となり販売台数を伸ばし、スマートフォンへと進化しながら今や誰でも1台は保有するまでになった。携帯電話の普及はコミュニケーションに変革をもたらし、特に若者文化を様変わりさせた。若者は直接顔をあわせることなくコミュニケーションを行うことができ、親には話せない秘密の会話もクルマに集まって…なんてことをする必要はなくなった。逆に2004年には運転中の携帯電話の使用の罰則が強化。クルマにいては安易に携帯電話でコミュニケーションを計れない環境になってしまった(もちろん、現在はBluetooth接続でこの問題は解決されている)。この例に限らず、それまで若者の自由とプライベートの象徴だったクルマは、さまざまな道路行政でがんじがらめになっていく。

 日本における道路行政の強化を時系列に並べていくと、

1990 初心者運転マークの1年間義務付け

1992 運転席シートベルト着用義務付け

2002 酒気帯び運転罰則強化。一発免停に

2006 駐車違反取り締まり民間委託と強化

2007 酒気帯び運転の罰金が30万円以下から50万円以下に

2008 後席シートベルト着用義務付け

2009 酒気帯び運転の減点が6点から13点に

 と厳罰化の一途。もちろん、よりよい交通環境の実現と悲惨な交通事故防止のため「当然のことを当然のごとく」行ってきた改正だったわけだが、これらがクルマの若者文化における魅力の大減退を引き起こした要因のひとつになったのは間違いない。また実際に88〜04年ぐらいまでの「第二次交通戦争」と言われた死傷事故が多発した時代に、親や親戚を通じてクルマが危険な側面を持つ経験をした人たちが多くいたのも確かだろう。そこでクルマよりケータイ=移動を伴わないコミュニケーションが発達し、若者のクルマに対するスタンスの変化が起きたのではないかと分析する(ちなみに、前回の記事でも述べたように、「若者のクルマ離れ」というは言い過ぎではないかと思っている。新成人のマイカー所有率は上昇しているからだ)。ともあれ、自動車がコミュニケーションが主だった目的のアイテムとしては、クルマはもはや窮屈過ぎ、リスキーなものになってしまったのは確かだ。

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