日本が凋落していった原因は3つ。「バブル崩壊」「冷戦終結」もう一つが…【中野剛志×黒野伸一】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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日本が凋落していった原因は3つ。「バブル崩壊」「冷戦終結」もう一つが…【中野剛志×黒野伸一】

この国はどうなる!? ポストコロナとMMT【対談第2回】

 

1991年8月23日、リトアニア ビリニュスのレーニン像撤去

■日本の成長が止まったのと、冷戦が終わった時期は一致している

 

 

中野:だから、戦後日本の経済成長は、冷戦期に西側にいたおかげという側面が多分にあるわけです。これは私の仮説ですけど、日本の成長が止まって凋落したのと、冷戦が終わった時期というのは一致しているのには、理由があるのではないか。すなわち、冷戦が終わったら、アメリカが日本を豊かにしておく理由はなくなったわけです。でも日本はおめでたいことに、冷戦中にアメリカの言うことを聞いてうまくやってこられたから、冷戦後もアメリカの言うとおりにやっていればいいんだと考え、外圧に従って構造改革だなんだとやってきて、今に至るわけです。

 

黒野:小説より恐ろしい話ですね。全部が裏目に出てきてしまったわけだ。当然、気づいている人もいたわけですよね。

 

中野:気づいていた人もいたんですよ。橋本龍太郎の構造改革は危ないと言っていた人もいたし、橋本自身が、日本をデフレに叩き込んでしまった後で、自分の間違いを認めたそうです。

 

黒野:反省していましたよね、彼は。

 

中野:そうしたら国民は、反省している橋本を叩いて、構造改革という、かつての橋本と同じ間違いを犯そうとする小泉純一郎を支持したんですね。しかも、熱狂的にですよ。で、さらに構造改革をやり続けたので、日本のデフレは長期化した。そのあと、2009年に民主党政権が出てきたけれども、民主党政権も構造改革路線とほとんど同じ方向を向いていた。で、民主党政権にはもううんざりだと言って国民が選んだ第二次安倍政権もまた、似たようなことをやっていた。もちろん、多少は違うけれど、基本は、新自由主義ですよ。民主党政権のやり方と安倍政権のやり方しか選択肢がないというのが、日本の不幸ですね。普通、リベラルは弱者の味方です。資本主義社会では、放っておくと強者が好き放題やってしまうから、弱者を守るためには、「大きな政府」の強い力が必要になります。それが、例えば福祉国家です。政府の力の拡大がけしからんと言っている人間に福祉国家ができるわけがない。ところが、日本のリベラルは、政府を大きくするのを阻止しようとしてきたのです。そして、民間主導を唱え、規制緩和や財政支出の削減にも賛成した。そういう意味で、リベラルも新自由主義が大好きだったわけです。特に、リベラルを代表する朝日新聞は、ほとんど教条主義的と言っていいほど、財政支出の削減を求め、消費増税も支持した。消費税は弱者により不利になる税制なのにですよ。要するに、我が国は、竹中系の新自由主義と、朝日系の新自由主義の二つの選択肢しかないわけです。どっちにしても新自由主義。これでは、政権を交代しようが何しようが、どうにもならないに決まっている。

 

新自由主義の旗手として政治家竹中平蔵は誕生し、当時首相の小泉純一郎が竹中を重用した

 

 

黒野:民主党政権の時に、最初の鳩山さんはさすがに自民党とは違う色を出して、社会福祉国家を目指そうとしていた。緊縮財政もほどほどにして、庶民のことを考えましょうよと……。そのころは格差が激しかったから、それはいいことじゃないのと思った。そう思っていたら、いきなり事業仕分けを始めて官僚をつるし上げた。無駄遣いはよくないと。あんな事業仕分けなんて必要ないわけですよ。そして菅(直人)さんになったら消費税を上げると言い出した。ビックリですよね。で、言ったとたんに東日本大震災が起きて……。その対応もメチャクチャでした。ああ、この人たち、国民を守ってくれないんだと。で、一段落したら今度は野田さんが“自民党です”みたない顔をして出てきて。三党合意で消費税を上げると。その上解散総選挙までやって、案の定、自民党が勝って消費税も上がりましたと。

 

中野:もう、国運が尽きたとしか言いようがない。

 

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