評論家・宇野常寛、出版不況の中の「本のテーマの決め方」
宇野常寛さん3月毎日更新 Q26. 「著作のテーマは毎回、どうやって決めているのですか?」
出版不況の中であえて紙を出すことの意味
僕の中では「単著」と「そうでないもの」とでは、本の作り方を明確に分けていますね。例えば、単著のなかでも『ゼロ年代の想像力』や『リトル・ピープルの時代』、『母性のディストピア』は“宇野常寛の代表作”にするためにも、自分にとって一番大事なテーマを書きました。そのためにも執筆には、じっくり時間をかけましたね。僕は対談本や共著を何冊も出していますが、そういった「単著ではないもの」は割と外部から持ち込まれた企画が多いです。要は、編集者や共著相手から来た球を打ち返している感じですね。あとは『PLANETS』の連載をまとめた本もあって、そういう「本にしたらもっとハッキリ伝えられる」と思って作ったものには共著も多いですね。こんな感じで、単著とそうではないものとでは明確な違いがあります。
出版不況の中であえて紙の本を、しかも『なかなか売れづらい』と言われているハードのものを出すというのは趣味の問題かもしれません。
「どれくらいの期間をかけて本を書くんですか?」と聞かれることもありますが、製作にかかる過程はその本によって全然違います。2017年に出た新刊の『母性のディストピア』は、本の原型となった連載は10年ぐらい前のものだったりしますし。代表作で見ると『ゼロ年代の想像力』は2008年で、『リトル・ピープルの時代』は2011年、そこから『母性のディストピア』までは6年の間隔が空きましたが、本当はもっと早く出したかったんですよ。でも、他の仕事の都合や時間のやりくりによって遅れただけですね。まあ、本の製作期間は一概には答えられないですね。
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宇野常寛・著『母性のディストピア』
宮崎駿、富野由悠季、押井守--戦後アニメーションの巨人たちの可能性と限界はどこにあったのか?
宮崎駿論4万字、富野由悠季論10万字、押井守論10万字の作家論を中核に、アニメから戦後という時代の精神をいま、総括する。
そして『シン・ゴジラ』『君の名は』『この世界の片隅に』――現代のアニメ・特撮が象徴するさまよえるこの国の想像力はどこにあるのか?
『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』とその射程を拡大してきた著者の新たな代表作にして、戦後サブカルチャー論の決定版。