宇野常寛の最新刊『母性のディストピア』に、周囲の反応は?
宇野常寛さん3月毎日更新 Q27. 「『母性のディストピア』が発売されて、周りからの反応は?①」
『母性のディストピア』は非常に具体的な本なんです
何をもって「周りの反応」というのか、まあ同業者や読者からの反響という意味では、悪い評判は全然聞かないですね。それは、今までの僕の集大成の1冊でもあるからでしょうね。
現在の出版業界のトレンドってはっきりしていると思うんですよ。一つはイデオロギー回帰の時代なので、右か左の立場をハッキリしたものがトレンドになっていますよね。
もう一つは自己啓発本。この手の自己啓発系やビジネス系の書籍って、「今、イノベーションが西海岸や中国の沿岸部で起きている。日本も頑張れ!」みたいなことを言うことが多いですよね。たしかに、多くの日本人が気づかないうちに日本は世界から本当に置いていかれていますけど、肝心のそのことを隠して「頑張れ!」と言う本が多い。もう一つは、やっぱり人文書に多いですけど、「グローバル化や情報化に流されずバランスをとって生きようみたいな」論調も人気ですよね。どっちも10000%くらい正しいでしょうけど、その一方でよくよく読んでみると当たり前すぎて“何も言っていない”とも思うんですよ。でも、不思議とそういったものが圧倒的にトレンドとしてありますよね。
だから、僕の『母性のディストピア』って非常に具体的な本なんですよ。そのせいで流行に乗った内容にはならなかったし、具体的な分防御力は下がっただろうけど、こういうものしか書きたくなかったんですよね。だから、すごく反時代的な本になったなあと思っています。ただ、内容的には昨今の大きなトレンドに乗っているわけではないのに、結構売れているんですよね。僕の主著の中では一番初速がいいと思います。しかも、値段は2999円と書籍のなかでも結構高い。それでも売れていますし話題になったと思いますね。
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宇野常寛・著『母性のディストピア』
宮崎駿、富野由悠季、押井守--戦後アニメーションの巨人たちの可能性と限界はどこにあったのか?
宮崎駿論4万字、富野由悠季論10万字、押井守論10万字の作家論を中核に、アニメから戦後という時代の精神をいま、総括する。
そして『シン・ゴジラ』『君の名は』『この世界の片隅に』――現代のアニメ・特撮が象徴するさまよえるこの国の想像力はどこにあるのか?
『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』とその射程を拡大してきた著者の新たな代表作にして、戦後サブカルチャー論の決定版。