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ハリルジャパンにある課題。長谷部誠が語った「大前提」とは

【欧州組の現在地】マリ戦後、長谷部誠が語ったこと

ロシアワールドカップ本大会開幕まで3カ月を切っている。マリ戦、ウクライナ戦は最後の遠征だ。ハリルジャパンの行方はーー。スポーツライターの寺野典子氏がリポートする。

■長谷部「ブロックを作っても……」

 先発メンバーの平均年齢が22.8歳という若いマリ代表相手に、日本代表は1-1で引き分けるのがやっとだった。前半にPKから失点し、試合終了直前に中島翔哉のゴールで追いついく展開で、試合後の選手たちは誰もが固い表情でミックスゾーンに現れた。

「(ワールドカップで対戦する)仮想セネガル代表として、マリ代表と対戦する。俊敏性や瞬発力を持つチーム。私が知っているマリ代表よりはパワーは落ちる。欧州でプレーする主力選手が来ていないからだ。しかし、我々も4、5人の選手を怪我など招集できなかった」

 ハリルホジッチ監督は試合前日会見でそう話している。

 吉田麻也、酒井宏樹、香川真司らを怪我で欠き、井手口陽介や浅野拓磨は所属クラブでの出場機会を失っている状態という理由で招集を見送った。それでも選手間の競争を促し、新しい選手を起用することで、「多くの情報を得たい」と語り、「さらに厳しい競争を作り出してほしい。目標は勝つこと。勝利のスパイラルを作って行きたい」とポジティブな姿勢を貫いていた。 

 そして、マリ戦。

 GKにはリオ五輪代表の23歳の中村航輔。右サイドバックでは30歳の宇賀神友弥が代表デビューを飾り、センターバックには昌子源と槙野智章、左サイドバックは長友佑都、ボランチには長谷部誠と指揮官自らがその成長を高く評価した大島僚太、右アウトサイドには久保裕也、トップ下にはベルギーで活躍する森岡亮太、左アウトサイドには2部ながらブンデスリーガで4試合連続ゴールを決めるなど好調の宇佐美貴史が復帰、1トップには大迫勇也という布陣で臨んだ。

 前半の立ち上がりは、ディフェンスラインを高く保ち、コンパクトな陣形で、狙い通りの入り方ができた。しかし、完璧というわけでもなかった。ミスが目立ち、攻撃のリズムが寸断される。効果的な縦パスが少なく、バックパスが徐々に増えていく。リスクを避けようとするプレーが怖さを奪う。それでもボールを失い、攻め込まれていくうち、安易なファールでPKを取られてしまった。

 

 後半に入ると次々にメンバーが代わり、攻守にわたり、チームとしての連動性が失われる。そうなると身体能力の高いマリの選手相手に、個人対個人で挑むことになり、その差が如実に現れる。陣形は間延びし、スペースが広がる。日本は自分たちで試合を難しくしているように見えた。

「今日は、しっかりと前から守備をはめにいくこと。守備ブロックの位置は相手の出方を見ながらと考えていた。前半に関しては、結構うまく行っている部分もあったし、チャンスも作れていた。ただ、最後に仕留める部分での精度を欠いてしまった。個々の局面でやっぱり、簡単に(守備を)はがされるシーンもあり、そうなるとブロックを作っても、ひとつはがされれば、どんどん、守備がずれて、ずれて、という感じになる。マリの個の力に、自分たちは個人としてもチームとしても、ずらされたという部分でやられたかなと思う」

 長谷部はそう試合を振り返った。
記者のペンが止まった……「取材対応」をとおして見える岡崎慎司の並外れた

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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