[実話]ラクダ飼いを目指した日本人がエジプトの砂漠で死にかけるまで
ラクダ飼い・ベドウィン族の見習いになる
――行方不明の親友を探しに海外へ……からの大冒険! エジプトの砂漠でラクダの群れとはぐれ失神、暴れロバと小猫、黄金の鳩と番犬を引き連れ、灼熱のモロッコで行商。前代未聞の25歳(当時)の冒険家・春間豪太郎が1000km歩いた6か月の記録の一部を、『-リアルRPG譚- 行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』より紹介しよう。
■「初めまして。私はラクダ飼いだが」
――冒険家の春間豪太郎は、ラクダ飼いのサリーマンと会うべく、三つ目のオアシス都市、ダクラ・オアシスに到着する。
この大きな町でラクダ飼いの情報を集めるのには苦労するかもしれない。そう考えつつも何人かの人に話を聞いていると、なんとすぐに複数の人々からラクダ飼いの情報を得ることができた。
ラクダ飼いはこの町ではかなり名の知れた人物らしく、名前はサリーマンというらしい。サリーマンは町から三十キロほど離れたベドウィン族が暮らす小さな村に住んでいるようだ。直接会って話がしたいというと、サリーマン自らおれがいる町まで来てくれることになった。
さて次の日、町まで来てくれたサリーマンと対面する。サリーマンは五十歳前後の小柄な男で、片方の目があらぬ方を向いていた。ありがたいことにサリーマンは少しだけ英語が話せたので、アラビア語交じりのカタコトの英語で話すことになった。
「初めまして。私はラクダ飼いだけど、何が望みなんだい? ツアーか?」
「初めまして。おれはラクダが買いたいんだ。ガイドなしで、一人で他のオアシスや町まで行ってみたい」
「なるほど、なかなか奇妙なことがしたいんだね。そういうことならあいにくだけど、少し前からエジプト軍が砂漠を閉鎖してしまったんだ。ヘリコプターで巡回もしているし、今の時期に外国人が砂漠にいたら、すぐに警察に捕まってしまうんだよ。
今までは大丈夫だったんだけどね……。おかげで組めないツアーも出てきたから、砂漠の観光業者は商売上がったりさ。まぁでも、今回のこの規制にはスーダンやリビアの観光業者も困っていて各方面からのクレームがすごいから、来年には解除されると思うよ」
……バハレイヤで得た情報と同じだ。どうやら一人で砂漠を渡ることはできないようだ。
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