【慣れてはいけない】家計の負担が大きく、公的資金は少ない日本の教育事情
第69回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
■教育への投資は誰がするべきなのか
日本という『国』は、教育にお金をかけない。政治家も経済界の大物も「教育は最重要」と言うが、金銭的に投資する仕組みづくりについては消極的だ。
3月10日の衆議院文部科学委員会で萩生田光一文科相は、大学入学共通テストの成績のみで合否判定する選抜区分のある私立大学について以下のように述べている。
「受験生からは1万5,000円とか2万円を徴収しながら、共通テストに750円だけを払って新入生を確保するのはあまりにも暴利ではないかと思う。安定的に共通テストを続けられるように考え直したい」
共通テストの成績だけで合否を決めているのに、大学入学共通テストには微々たる成績提供手数料しか払わず、受験料の大半を懐に入れているのはズルい、というわけだ。
大学入学共通テストは今年初めて実施されたが、これを実施しているのが『独立行政法人大学入試センター』だ。その収入の約9割は検定料で占められている。つまり、受験生が負担している。
しかし、少子化によって受験生である18歳人口は減りつつある。萩生田文科相によれば、2017年の大学入試センター試験の志願者数58万人をピークに、今年の大学入学共通テストの志願者数は約53万人、2023年には約50万人まで減少する見込みだという。
それだけ、大学入試センターの収入も減ることになる。経営的に苦しくなり、大学入学共通テストの制度そのものが存続できなくなる可能性もある。
しかし、収入の9割を占める受験料の値上げを実施すれば、受験生や保護者から批判を浴びることになる。そこで目をつけたのが、私立大学の成績提供手数料の値上げというわけだ。受験生から徴収している受験料のうち、大学入試センターの取り分を増やす方向に動きだそうとしている。
ただし、受験料に対して大学入試センターの取り分が増えるとすれば、私大側も黙ってはいないはずだ。反対する動きも出てくるだろう。それでも配分を見直されてしまったら私大側はどうするか。
手っ取り早いのは、受験料の値上げである。
大学入試センターへの配分見直しに反対することは、国や文科省と対立することになる。それは助成金等の関係で、私大としては避けたい。そのためには、受験料の値上げが手っ取り早いのだ。受験生や保護者からの不満は、我慢して聞き流せばいいだけのことでもある。
萩生田文科相の発言は、結局は受験生や保護者に跳ね返ってくることになる。私大の負担増を求める発言に聞こえるが、実際は受験生や保護者に負担増を強いているのと同じなのである。
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