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【慣れてはいけない】家計の負担が大きく、公的資金は少ない日本の教育事情

第69回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■日本の教育費用は家計負担が大きい

 なぜ萩生田文科相は国の負担増の道を考えようとしないのだろうか。大学入試センターに国が助成する道を考えないのだろうか。
 大学入学共通テストは、国や文科省が決めた制度である。そうであるなら、経済的にも国や文科省が面倒を見るのが当然である。しかし、それをしようとしないのが国であり文科省なのだ。

 2020年9月8日にOECD(経済協力開発機構)は、加盟各国の教育状況を定量的で国際比較が可能な教育データとして毎年公表している『「図表でみる教育」(Education at a Glance)』の2020年版を発行している。
 それによれば、2017年において初等教育から高等教育に対する公的支出額は、OECD諸国平均で政府総支出の10.8%を占めていたが、日本は7.8%である。
 割合が最も高かったのはチリの17.4%で、日本の2倍以上にもなっている。最も低かったのはギリシャの6.6%であり、日本との差はさほどない。
 日本の政府総支出における教育への支出の割合は、OECD諸国のなかで最低に近いことになる。調査対象となったOECD諸国をはじめとする44ヶ国のなかで後ろから5番目という順位だ。
 日本は教育にお金を使わない国なのである。

 ただし児童・生徒・学生1人あたりの年間教育支出は、日本では1万1896ドル(米ドル換算)となっている。OECD平均の1万1,231ドル(同)を大きく上まわっている。順位も、今度は前から16番目である。
 国の支出が少ないのに1人あたりの年間教育支出が多くなっているのは、家計からの支出が多いからだ。2017年で家計からの教育支出は3,409ドルで、これは4位にあたる。ちなみに1位はアメリカ(5,814ドル)、次いでイギリス(4,665ドル)、オーストラリアの(4,505ドル)の順となっている。

 つまり日本の教育では、家計の負担が大きく、国の負担は小さく抑えられている
 先述した萩生田文科相の受験料での大学入試センターの取り分を増やせとの発言は、国の負担を抑える方向を変える気はなく、その分を家計に負担させる根本的な発想そのままといえる。

 ようやく動きだした少人数学級がまだまだ不十分なものでしかないのも、教員数が足りずに過重労働が強いられているのも、国が教育への支出を増やす気がなく、抑えることしか考えていないことに大きな原因がある。
 これが「教育が重要」と口では言いながら、少しも大事にされていない日本の教育の現状をつくりだしている。
 その現実を改めて見つめなおし、考えてみる必要がありそうだ。 

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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