芸能人水泳大会に続いて、美女の温泉入浴ルポも。消えゆくテレビのエロスに亡国の兆しを見る【宝泉薫】
■民放各局が放送していた「芸能人水泳大会」はなぜ消えた?
じつは「温泉には美女」というお約束がすたれてきた背景にも、ジェンダーをめぐるコンプライアンス的な事情がある。フェミニストたちが何かと「女性的魅力の性的消費は許さない」などと騒ぎ立てるので、テレビ局側も面倒になってきているのである。フェミは少数派にすぎないが、声がでかい。蚊が一匹でもいると気になるのと同じだ。
そうこうするうち、美女による入浴シーンは、あの人気番組の二の舞になってしまうのではないか。1970年代から90年代にかけて民放各局が放送していた「芸能人水泳大会」だ。
山口百恵や松田聖子、男性では西城秀樹や田原俊彦といったトップアイドルが水着姿になり、競泳や騎馬戦を行なう趣向で「紅白歌合戦」のラインダンスなどにも通じるスターの明るいエロスが愉しめた。あからさまなところでは、AV女優などによるおっぱいポロリのハプニングも用意(?)され、もっぱら男性視聴者を歓ばせたものだ。
とはいえ、それだけではない。ライバル同士が本業以外でもバチバチの火花を散らすのがまた面白かったのだ。
たとえば、近藤真彦はデビュー当時カナヅチだったため、飛び込み台からどれだけ遠くへ飛べるかという競争に登場。5メートルだったか10メートルだったか、とにかく他の人よりも高い台から飛んで優勝した。それでもやはり、泳げないのが恥ずかしかったのだろう。その後、練習に励み、最終的にはトライアスロンまでやるようになって、海で人命救助もした。その原点が、この水泳大会だったわけだ。
また、この飛び込み競争はミョーに気持ちを高ぶらせるようで、現場取材をした際、CoCoをはじめとする女性アイドルたちが異様なテンションで競い合う場面を目撃した。場所は大磯ロングビーチ。90年前後の「アイドル冬の時代」のことだ。歌番組が減って思うように活躍できず、みんなストレスをくすぶらせていたというのも影響したのだろう。
なお、こうした番組にはアイドルのほか、演歌やニューミュージックの人も参加した。意外と張り切る人もいれば、明らかに恥ずかしそうにしている人もいたものだ。今ならYOASOBIのikura(幾田りら)ちゃんあたりの貴重な水着姿を見ることができたかもしれない。そう考えると、水泳大会の衰退は痛い。運動会やかくし芸大会などもそうだが、なんでもやって楽しませるという、芸能の業がうすまってきている気もして残念だ。