書店の「閉店」から生まれた「希望」の話~さらば、小田急ブックメイツ新百合ヶ丘店~
拝啓、本が売れません 第1回
松本清張賞と小学館文庫小説賞をダブル受賞して華々しくデビューした若手作家が『拝啓、本が売れません』という本を刊行することになったり、その本を刊行する出版社が突然買収されたり……ということからもわかる通り、現在、出版業界はとてつもない「踏ん張りどころ」を迎えている。
毎週のように「書店の閉店」のニュースが飛び交い、今この瞬間も、日本のどこかで書店が閉店し、この国から本屋さんがまた1つなくなっていく。
だからこそ、本日は《希望》の話をしたいと思う。
私達物書きの仕事は、世界がどんな絶望の淵にあろうとも、その中から希望を紡いでいくことだと思うので。
■小田急ブックメイツ新百合ヶ丘店という書店
新宿駅から小田急線の急行に揺られて30分弱。新百合ヶ丘駅で下車して、改札階から直結している小田急アコルデ新百合ヶ丘北館へ。改札から1分とかからず、シャッターがぴしゃりと閉じられた書店を見つけることができる。
それが、小田急ブックメイツ新百合ヶ丘店だ。2018年3月10日(土)17時に、地元住民のみならず、多くの作家や出版関係者に惜しまれつつ閉店した。
閉店の5日前。3月5日(月)には、店との別れを惜しむ作家が集まり、サイン会が行われていた。
閉店を悲しむ作家達の自主的なイベントであったため、大々的な告知等も行われないまま開催されたサイン会だったが、SNS等で開催を知ったファンが小田急ブックメイツ新百合ヶ丘店に駆けつけ、イベント開始前から長蛇の列を作った。
イベントに参加した作家は以下の通り(敬称略・順不同)。かくゆう私、額賀澪もイベントに参加した作家の一人である。
佐藤青南/似鳥鶏/芦沢央/誉田龍一/あいま祐樹/大崎梢/篠原昌裕/天祢涼/堀内公太郎/徳永圭/知念実希人/村山早紀/額賀澪
■「お店へ恩返しを」から始まったイベント
イベントを計画した佐藤青南さんは、開催の理由をこのように語った。
「駆け出しの頃、初対面の僕に『お店に遊びに来てください』と言ってくださったのが小田急ブックメイツ新百合ヶ丘店の狩野大樹店長でした。無名の作家にそんな風に言ってくださる書店さんはなかなかないのでびっくりしたし、小説を書き続けようと思わせてくれたんです」
「閉店までに店頭の在庫を少しでも減らしてお店へ恩返しをしよう」と思い立って参加者を募った。当初は数人で細々と行うつもりだったが、一人また二人と参加者が集まっていき、最終的には13人もの作家が集まる大イベントとなった。
また、当日は狐塚冬里さん、円山夢久さん、畑野智美さん、中島要さんといった人気作家も飛び入りで駆けつけ、数多くの小説の装画を手がける人気イラストレーター・げみさんも店頭に現れた。
両手に抱えきれないほどの本を抱えた参加者は、店内の至るところにいるお目当ての作家を探し、列を作る。作家達はブックトラックやレジ横、ときには買い物カゴの上で自著にサインをした。手の空いた作家が他の作家がサインするのを手伝ったり、列を裁いたり、記念撮影のカメラマンを買って出たりといった珍しい光景も店内では見られ、レジからはバーコードを読み取る音や、本を大きな紙袋へと入れる音が鳴り止まなかった。
レジ対応をしていた書店員の一人が、忙しい中このように話してくれた。
「こんな大きな紙袋、普段はなかなか使わないですよ! 凄いです!」
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【イベント情報!】
3月30日に額賀澪さんトーク&サイン会(三省堂書店神保町本店)開催。
特別ゲストに小説家の佐藤青南さんをお迎えします!