『文庫X』仕掛け人 新人女性作家の挑戦作。自分ならここを売り出す
本のプロが読む、額賀澪『拝啓、本が売れません』(「さわや書店」長江貴士さん)
2015 年に『松本清張賞』と『小学館文庫小説賞』をダブル受賞してデビューした平成生まれのゆとり作家が直面した出版不況の現実! いかに自分の本を売っていくか。その方法を探すために、担当編集と旅に出る! 3月20日刊行。「拝啓、本が売れません」を本を読むプロの皆様に一読していただき、感想をいただきました! 賛否両論、あわせてお届けいたします。
「本書を読むべきかどうか悩んでいる人は、まず巻末のあとがき(というか、『「拝啓、本が売れません」をここまで読んでくださった方へ』という文章)を読んで欲しい」
――さわや書店 長江貴士
僕が本の売り方を考える時、意識していることがある。それが「変換」だ。僕は少し前、『文庫X』という企画を手がけたが、その根本にある発想も「変換」だった。『殺人犯はそこにいる』(清水潔 新潮文庫)という、普通には手にとってもらいにくいだろう本を、「タイトルを隠す」や「オススメの理由を書き連ねた全帯を巻く」といったやり方で「自分が読むべき本」だと感じてもらう―あの企画ではそういう「変換」を意識していたつもりだ。
本書に登場するある有名な編集者が、『僕は創作物に面白くない作品は一つもないと思ってるんです』という場面がある。この意見に、僕は比較的賛成出来る。自分に合う作品、合わない作品はあるが、どんな本でも「面白い」と感じる人がいるはずだと思う。だから、本を届ける人間がしなければならないことは、「その本にはどんな面白さがあるのか」「その本のどの面白さを誰に向けて押し出すべきか」を捉え、アイデアを考えることだと思っている。
この一連の流れを、僕は「変換」と呼んでいる。今の僕の仕事の基本となっている考え方だ。