高級住宅地イメージと地価は比例しない? 「ブランド地名」の今昔
【地名の謎と歴史】ジャンル別地名ランキング
高級住宅地といえば? 多く使われるナンバープレートの地名は? 「ご当地銀座」の元祖は? あなたの知る地名はなぜブランド地名になったのか。そのルーツと人気の理由をランキングとともにご紹介する。(一個人増刊『47都道府県 地名の謎と歴史』)
■老舗エリアが復権 ブランド地名は移りゆく
夢の住宅地、ブランド地名といえば、東京の田園調布か成城、兵庫の芦屋や武庫之荘というのが定番だった。しかし、土地の価値という点ではそうともいえなくなってきている。
国土交通省が公開する地価公示価格の住宅地編によれば、平成31年度末時点での全国第1位は赤坂。以下、東京中心部の地名が並び、田園調布はトップ10にさえ入っていない。その理由を、地名のスペシャリストである日本地名研究所の菊地恒雄さんに伺うと、「田園調布などは長年住み続けている人が多く、比較的一軒家が多いエリアなので、新たに住める場所がなくなったのかもしれません。だから、これからまだ開発の余地のある赤坂や六番町に人気が集まっているのではないでしょうか」と分析。
確かに、地価ランキング上位は「住宅地?」と感じてしまう地名ばかりだ。トップの赤坂をはじめハイソな商業地やビジネス街で、大規模開発業者などのいう通称「3A+R(赤坂・青山・麻布・六本木)」が並ぶのに違和感があるかもしれない。実はそこが従来までの常識を覆すポイントにもなっている。
昭和初期から開発が進んで、その後高級住宅地となったのが「新」ブランド。一方の港区赤坂、2位の千代田区六番町などは老舗ブランドといえる。江戸期や明治から栄え、「足で回れる」範囲に衣食住から仕事までがコンパクトにまとまった街である点が共通する。ただ、そんな老舗ブランドの街は、古くからの住人たちがいたため、広域開発を免れてきた。その状況が変わってきたのがここ数年。オリンピックなどをきっかけとした総合的な都市インフラ改修という流れとともに、老舗ブランド地域にも新たな再開発の波が押し寄せ、大規模住宅が次々と登場してきた。
「時代とともに伝統ある地名が消えていくなか、由緒ある名前が新しくブランド化していく意味は大きいですね」
ブランド地名は、時代とともに変化していくのだ。
■人気「ご当地ナンバー」地名は?
県をまたぐご当地ナンバーの登場
自動車のナンバーは平成18年から大きく変わった。その代表が「ご当地ナンバー」の登場。これまでの規制条件が緩和され、使用する人の拠点となる市町村が発行するものなら、申請するだけで好みの地名のナンバープレートを取得することができるようになった。地名のイメージで人気のものや、新しい地名のナンバープレートの登録車数増加率は非常に高くなっている。
ご当地ナンバーで注目すべきは、静岡・山梨2県をまたいで交付されている「富士山」だろう。国土交通省によると、平成20年の登場から約7年で32万件以上の登録がある。さらに、8〜10位は車が必需品ともいえる地域での登録・変更が目立つ結果となった。
また、本格的な「ご当地」登場前からある湘南ナンバーや「走る広告塔」と謳われている図柄入りナンバープレートなど、人気アイテムも増えている。令和2年5月11日からは第3弾として新たに17地名が登場した。
■「ご当地銀座」のルーツは戸越銀座
華やかな銀座の繁栄は全国に知れわたり、あやかられた。
「銀座」の地名は全国に存在する
全国的に有名な東京・銀座。その地名は、江戸幕府の銀貨鋳造所があった「新両替町」という町名が、通称「銀座」と呼ばれていたことに由来する。ただし日本最古の「銀座」地名は、同じく銀貨鋳造所が置かれていた、京都市伏見の「伏見銀座」だという。
そんな京都と東京の銀座は「由緒正しい」銀座といえるが、ほかにも全国には銀座を名乗る商店街や地名が点在しており、その数は三桁に及ぶ。その一部は本家銀座との間に、何らかの関連があったとされる。しかし、そうした例は一部にすぎず、「ご当地銀座」が増加したのにはまったく別の理由があった。
大きなきっかけとなったのは、大正時代前半に造られた銀座煉瓦街。道路を大きくとり、建物を煉瓦造にすることで、銀座は日本橋を凌ぐ商業地として発展し、その地名は一気にブランド化、日本全国に知れわたった。その隆盛にあやかりたいと、昭和に入ると商業地などを中心に旧来の地名に「銀座」をつける例が急増したのだ。
(『47都道府県 地名の謎と歴史』より抜粋)
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