聖火リレーのスタート地 福島のシンボル磐梯山にまつわる由来伝説
『47都道府県 地名の謎と歴史』「風景で楽しむ地名伝説」
Jヴィレッジ(福島県双葉郡楢葉町)で出発式が行われ、東京2020オリンピック聖火リレーが始まりました。コロナ禍が終息しないなかでの開催となり、一部自治体で中止や規模縮小の案が浮上するなど、波乱ぶくみのスタートとなりました。
本来は「Hope Lights Our Way 希望の道を、つなごう。」というコンセプトのもと、47都道府県くまなく聖火をつなぎ、日本各地の魅力を全国に、そして世界に発信することも目的とされていました。
ともあれ、これから大会本番までの4カ月間、聖火リレーを通じて、全国の風景や伝統・文化などに目を向ける機会が増えるのは喜ばしいことです。
世界一バラエティ豊富な「地名」もまた、日本が誇る無形文化といえるでしょう。本誌『47都道府県 地名の謎と歴史』では、日本人の民俗性が色濃く出た「地名の由来」をひもといています。
聖火リレーのスタート地・福島県(3月25日~27日)では、磐梯山の麓も会場となりましたが、今回は本誌の記事から、磐梯山にまつわる由来伝説をご紹介します。
磐梯山[ばんだいさん]福島県
□神の降臨する山
『万葉集』には「会津嶺」の名で詠まれ、東北地方を代表する山のひとつとして、古代より信仰の対象とされてきた磐梯山。この山を御神体とする磐椅(いわはし)神社によれば、その名前は「天に達する磐の梯(はしご)」を意味するという。主峰の磐梯山ほか3峰は806年の大噴火で上部が吹き飛ぶまでひとつの山だった。古代の人はそれを神の降臨する場と掟え、磐梯山に登ることは神の領域に近づく神聖な行為としたのではないだろうか。
福島から聖火を受け取る栃木県(3月28日~29日)にも、県のシンボル的な山にまつわる「由来伝説」があります。
戦場ヶ原[せんじょうがはら]栃木県
□山と山が喧嘩した
日本を代表する湿原として知られるこの地には、男体山の神と赤城山の神が中禅寺湖を巡って争ったという伝承がある。男体山側の弓の名手が、赤城山のムカデの大将の目を射抜き、男体山が勝利。その合戦場が「戦場ヶ原」、ムカデの流した血が固まったのが「赤沼」になったという。この神話は広大な平地を畳の「千畳」にたとえた「千畳ヶ原」から生まれたものだろう。しかし男体山にある二荒山神社には今も、赤城山に向かって弓を引く「武射祭」という神事があるという。
(『47都道府県 地名の謎と歴史』「風景で楽しむ地名伝説」より)
どちらも、自然に親しみ自然を崇める日本人らしい伝承です。地名の由来としては諸説あるうちのひとつではあるものの、実際にその雄大な風景を眺めると腑に落ちるような説得力を感じます。
聖火リレーのコースは山あり海あり砂丘もあり、田園地帯も宿場町もビル街も駆け抜けます。いまはテレビやWEBで観覧・応援して、気になる風景や町があれば、いずれ訪れてみたいものです。