ソ連の秘密工作機関「ウェア・グループ」の目的
戦争勢力の暗躍と、乗っ取られたホワイトハウス シリーズ!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー⑪(最終回)
■一九三〇年代に始まったアメリカ政府内部への共産主義者浸透工作
ルーズヴェルト民主党政権下で、連邦政府内にはハロルド・ウェアという共産党員をリーダーとする地下組織「ウェア・グループ」が省庁をまたがって形成されていました。「ウェア・グループ」のメンバーは、ホワイトハウス、国務省、法務省、財務省、労働省、農業調整庁、社会保障庁、全米労働関係委員会、連邦公務員組合、上院、そして、陸軍の軍事施設であるアバディーン性能試験場にも浸透し、名指しされているだけでも二十数人に及んでいました。
ソ連軍情報部(GRU)につながる地下組織「ウェア・グループ」の目的は、単なる政治学習や勉強会ではなく、機密情報を盗み出すスパイ活動だけを行っていたわけでもありません。彼らの最大の目的は「積極工作」、つまり、政府内部に入り込んで政策決定に干渉し、アメリカの政策そのものをソ連に有利な方向に捻じ曲げる政治工作でした。
チェンバーズはベストセラーとなった著書『証人(Witness)』(Regnery History, 2014)の中で、「ウェア・グループ」の目的をこう述べています。
当時のアメリカ民主党の政治家たちは労働組合から支援を受けるようになっていたので、労働組合の意向に敏感でした。この労働組合の幹部に、ソ連の秘密工作機関「ウェア・グループ」のメンバーがいたため、民主党の政治家は、ソ連の秘密工作に強い影響を受けていたというのです。
ウェア・グループに属する工作員は当然、政府機関、労働組合、マスコミなどの中に入り込み、連携して動いていましたが、このように政府やニューディール機関などに存在していた地下組織のグループはウェア・グループの他にも複数ありました。
各グループの機能は学習会的なもの、プロパガンダ、非公然の破壊活動などさまざまで、人事配置、昇進、セキュリティチェックで便宜をはかるなど、グループ同士で支援し合い、守り合っていました。
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