『桃鉄』の前身『桃伝』の元ネタ 「桃太郎」のリアルなルーツ「温羅伝説」とは
おこもり需要もあって、『桃太郎電鉄』(桃鉄)がブーム。最新Switch版は「昭和 平成 令和も定番!」という副題そのままに、30余年前のシリーズ発売を知る大人世代から現代のキッズにまで親しまれています。桃鉄が幅広い年代を惹きつける理由の一つに、プレイするうちに地名や名所・名産品に詳しくなるという学習要素があります。「桃鉄で地理を勉強した」と公言するヒャダインさんをはじめ、桃鉄から地理好きになったという人は少なくありません。
ところで、この桃鉄の前身である『桃太郎伝説』(桃伝)を覚えているでしょうか。プレイしたことがある人はきっと昭和世代、平成・令和世代にはなじみがないかもしれません。簡単に説明すると、昔話の「桃太郎」をベースにしたRPGゲームです。桃鉄はその派生タイトルですが、キャラクター以外は設定もゲームジャンルも全く別もの。「桃太郎」を換骨奪胎した桃伝は全編にギャグ要素が散りばめられ、金太郎や浦島太郎など他の昔話キャラも多数登場します(いまでいう「三太郎」のようなものです)。
さて、日本で最も知られている昔話であろう「桃太郎」。そのストーリーが、歴史上の人物にまつわることをご存じでしょうか。本誌『47都道府県 地名の謎と由来』から抜粋してご紹介します。
「桃太郎」の原型はここから
鬼ノ城[きのじょう]岡山県
総社市の鬼城山にある鬼ノ城。7世紀頃の築城だが、目的はわかっていない。城の名前は吉備地方に残る「温羅(うら/おんら)伝説」に由来する。温羅という男が鬼ノ城を根城に悪行を重ね、見かねた崇神天皇が武芸に秀でた吉備津彦命を派遣するというものである。まさにこれは桃太郎伝説の原型といわれるものだ。鬼とされた温羅とは、製鉄技術を持ち込んだ豪族のことではないかといわれている。 (風景で楽しむ「地名伝説」)
桃太郎のモデルとされる吉備津彦命は『古事記』『日本書紀』にも登場します。実在の人物か否かはさておき、古代の吉備地方に有力豪族がいたことやかなり古い時代に製鉄技術がもたらされたことは、巨大古墳とその埋葬品によって裏付けられています。ヤマト王権による地方遠征が鬼退治という伝説に転化したのかもしれません。
各地に残る地名とその由来伝説をひもとくと、郷土の意外な歴史が見えてくることもあります。桃鉄から地理好きになった(?)という方も、よりディープな地名の世界に触れてみてはいかがでしょうか。