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【配布率は約98%】新学期から本格化するICT端末利用が教育現場に与える影響

第71回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■現状、そして配布の先にある課題はどうか

 先述した文科省の「進捗状況について」にも、今年3月末までの納品が完了できない理由について、「入札の公示等はしたが不調になった(6自治体等)」「端末への受給のひっ迫等による納期遅延(13自治体等)」と報告されている。
 ほかにも、OSの選定や仕様の決定、関係者との調整に期間を要し発注時期が遅くなった、機器納品後の設定に時間を要しているなどの理由も挙げられている。1人1台ICT端末を実現するために、自治体をはじめとする現場は大混乱だったのだ。

 端末の設定については、多くが学校現場に任されている。児童・生徒一人ひとりに配布するために、誰にどの端末を渡したかの把握や、端末ごとの設定がある。それを学校現場、つまり教員にやらせている。
 これは大きな負担である。それをクリアして今年4月の新学期に間に合わせた学校が、全体の97.6%もあったのだ。奇跡といっていいくらいである。

 しかし23日の会見で萩生田文科相は、「これはもう首長の能力が問われると思います。あるいは、議会のみなさんの姿勢っていうのも、当然、住民のみなさんから問われるものだと思います」と述べているのだ。3月末までの端末整備の見通しが立っていない自治体については、その首長や議会の能力が不足していると言っていることになる。
 
 GIGAスクール構想の入口となる1人1台ICT端末を全国で一斉に、萩生田文科相は実現したいのだろう。4月1日に全国の全小中学校で1人1台ICT端末が実現すれば、それは文科相や文科省の「手柄」になる。そのために、必死でハッパをかけていることになる。

 とはいえ、「形」だけの1人1台端末が実現したところで、それが子どもたちや学校のためになるわけではない。
 ある自治体では、いったん校内通信ネットワークを構築してみたものの、完成してみると容量が少なすぎて役に立たず、工事のやり直しをせざるを得なかったという。予算を最小限にするために必要容量を少なく見積もりすぎ、結果として、最初の工事費はムダになり、余計な出費になってしまったことになる。

 同じようなことが、あちこちの自治体で起きているかもしれない。4月1日から本格的な運用になってくれば、さらにいろいろな問題が起きてくる可能性はある。急ぎすぎた弊害が、これから顕在化してくるのは避けられないだろう。
 それを萩生田文科相は、「首長の能力が問われる」や「議会の姿勢が問われる」と言うのかもしれない。言われた首長や議会は、我が事として受け止められるのか。責任を学校現場に丸投げする可能性はある

 4月1日からの新学期は、ICT端末利用をめぐる波乱の幕開けとなるかもしれない。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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