安倍晋三、菅義偉、小泉進次郎…なぜ日本人はかくも小粒になったのか【福田和也】
福田和也「乱世を生きる眼」
小泉元総理が、ある種の際だった才をもっていた事は、確かでしょう。
貪欲なマスメディアーーその欲深さはまた、日本国民全体のものであることは間違いありませんーーを逆手にとり、彼らの求めるものを与える代わりに手玉にとった手際は、見事としか云い様がありませんでした。
でもそれだけの事です。
政治闘争は、手段を選ばないというのは、洋の東西を問わない鉄則であるとはいえ、「刺客」と称するインスタント候補を出馬させて、反対派を浴びせ倒そうとする手口は、ある意味で議会政治そのものの自己否定に他ならないものでした。
そして、そこまでして一体、国民は何を得たのか。
あやしげな郵便会社だけではないですか。
その「教訓」が、選挙民を多少とも賢明にしたと信じたいのですが。
けれども、あの選挙ほど、現在の日本人の虚無を、何の信念も、確信も持たない様を示した事件はなかったと思います。
そして私たちは、いまだその虚無を、克服していない。
才人はいるが人物がいない。
キャラクターがあっても人格がない。
儲け話はあっても志はない。
演出と自己陶酔があるだけで、本当の感動はない。
幕が引かれれば自分が熱狂していたことすら忘れてしまい、狐につままれたような心持ちになるのです。
こうした状況は、一朝一夕にはなおらないでしょう。
まだまだ、続くと考えなければなりません。
無意味な空騒ぎを何度も繰り返し、さらに繰り返させる事になるでしょう。
なぜこんな事になったのか。
日本から人物が払底して、小物ばかりになったのはなぜなのか。
この事を、しっかり考えないかぎり、人物らしい人物は出てこないのではないでしょうか。
いかにして、日本人はかくも小粒になったのか。
その理由と本質を考える事が、今、一番、重要な事ではないか。
私は、そう思っております。
※「なぜ日本人はかくも小粒になったのか」の理由については次回に続く
(『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』より本文一部抜粋)
KEYWORDS:
社会、国、人間関係、自分の将来に
不安や絶望を感じている読者へーーー。
学び闘い抜く人間の「叡智」がここにある。
文藝評論家・福田和也の名エッセイ・批評を初選集! !
◆第一部「なぜ本を読むのか」
◆第二部「批評とは何か」
◆第三部「乱世を生きる」
総頁832頁の【完全保存版】
◎中瀬ゆかり氏(新潮社出版部部長)
「刃物のような批評眼、圧死するほどの知の埋蔵量。
彼の登場は文壇的“事件"であり、圧倒的“天才"かつ“天災"であった。
これほどの『知の怪物』に伴走できたことは編集者人生の誉れである。」
[caption id="attachment_885462" align="alignnone" width="205"] 『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』(KKベストセラーズ)絶賛発売中。[/caption]