データで見る、平成が「非正規雇用拡大」の時代となった背景 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

データで見る、平成が「非正規雇用拡大」の時代となった背景

数字で見る!平成ニッポン。〈雇用〉

(図2-2)女子の短大・大学進学率と短大卒就職率の推移 出典:文部科学省/学校基本調査

女子の大学進学率が急伸

 さて、こうした経済要因は雇用だけでなく、教育にも激変を及ぼした。今振り返った領域、製造・建設・自営業・事務というのは、これすなわち高卒・短大卒の採用受け皿だ。つまり、平成初期の雇用構造の変化は「高卒・短卒では就職がない」という状況を生み、大学進学熱が高まっていくことになる。ちょうど、バブル崩壊期は第二次ベビーブーム世代の大学学齢期にも当たる。ここから先は、大学入学年齢の人口が減少期と重なる。そのため、大学進学率は一気に高まった(図2‐2)。

 中でも、女子は前記の通り、短大卒→事務職就職の道が閉ざされたために、大学進学率が急伸し、1996年に短大進学率を上回る。ここからは女子も4年生大学に行くことが当たり前となり、彼女らが卒業する2000年頃から、また雇用に波乱が起き始める。

 まず、膨れ上がった大卒者が新卒採用の席を奪い合うことになる。そこに今までは少数だった女子が参入する。こうした状況であれば、かつては普通に就職できた男子大学生もうかうかしていられなくなる。そのため、以降、不況になるたびに就職氷河期と騒がれるのだ。

 ふたつ目の影響は、こうして少しずつ四大卒女子の総合職採用が増えていく中で、彼女らが腕を磨きバリバリのキャリアウーマンになる時期=2010年あたりから、「女性活躍」の芽が生まれだすのだ。企業としては、せっかく育てた女性社員が育児・家事で退職することを良しとはできなくなってきた。しかも少子化がさらに進行したため、新規採用するにもとても男子偏重などと言っていられない。そこで「女子を採り、育て、辞めさせない」ということが社会的使命となっていく。その先に「女子が働き続けるなら、だれが家事・育児をするのか」問題が続く。昨今、働き方改革が世に問われるのはそういう事情があるからだ。

 このように、大局的に考えると、何がどうつながったのか、流れは簡単に理解できる。

〈雑誌『一個人』2018年5月号より構成〉

KEYWORDS:

オススメ記事

海老原 嗣生

えびはら つぐお

雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。コンサルタント、編集者。株式会社ニッチモ代表取締役。株式会社リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ。『即効マネジメント:部下をコントロールする黄金原則』(ちくま新書)等、著書多数。


この著者の記事一覧