戦後76年の平和日本は、なぜひとりの「大隈重信」を生み出せなかったのか。【福田和也】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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戦後76年の平和日本は、なぜひとりの「大隈重信」を生み出せなかったのか。【福田和也】

福田和也「乱世を生きる眼」

 

■国家民族の命運のためには、一個人の生命などは何ほどの意味ももたない

 

 国家民族の命運のためには、一個人の生命などは何ほどの意味ももたない、というような考え方が、問い返すまでもない常識として浸透していました。みずからの身の上を含めて、国のため、名誉のためには、一命を投げ出すという覚悟が、覚悟ともいえないほどの当たり前として徹底されていたのです。

 平気で生徒を殺せる教育。

 もちろん、教師たるもの、学生を死なせて平気であるわけがありません。

 しかし、その厳しさがなければ、極東の小国はなりたっていかない。

 だから、止むを得ず厳しくせざるをえない。

 それは、教える側にも、強烈な負担と気構えを迫るものであることは間違いありません。

 一時期、こうしたスパルタ教育は、画一化された人間しか生まなかったと批判されました。

 けれども、今、思い返してみれば、現在とは比較にならない、多彩な人物を生んでいると思うのですけれども。

 鈴木貫太郎や野村吉三郎、山梨勝之進、山口多聞、大西瀧治郎、小沢治三郎のような人物を、戦後日本は、生んだでしょうか。

(続く)

 

『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』より本文一部抜粋)

 

 

 

KEYWORDS:

社会、国、人間関係、自分の将来に
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福田 和也

ふくだ かずや

1960年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院修士課程修了。慶應義塾大学環境情報学部教授。93年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、96年『甘美な人生』で平林たい子賞、2002『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、06年『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『昭和天皇』(全七部)、『悪と徳と 岸信介と未完の日本』『大宰相 原敬』『闘う書評』『罰あたりパラダイス』『人でなし稼業』『現代人は救われ得るか』『人間の器量』『死ぬことを学ぶ』『総理の値打ち』『総理の女』等がある。

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