戦後76年の平和日本は、なぜひとりの「大隈重信」を生み出せなかったのか。【福田和也】
福田和也「乱世を生きる眼」
■国家民族の命運のためには、一個人の生命などは何ほどの意味ももたない
国家民族の命運のためには、一個人の生命などは何ほどの意味ももたない、というような考え方が、問い返すまでもない常識として浸透していました。みずからの身の上を含めて、国のため、名誉のためには、一命を投げ出すという覚悟が、覚悟ともいえないほどの当たり前として徹底されていたのです。
平気で生徒を殺せる教育。
もちろん、教師たるもの、学生を死なせて平気であるわけがありません。
しかし、その厳しさがなければ、極東の小国はなりたっていかない。
だから、止むを得ず厳しくせざるをえない。
それは、教える側にも、強烈な負担と気構えを迫るものであることは間違いありません。
一時期、こうしたスパルタ教育は、画一化された人間しか生まなかったと批判されました。
けれども、今、思い返してみれば、現在とは比較にならない、多彩な人物を生んでいると思うのですけれども。
鈴木貫太郎や野村吉三郎、山梨勝之進、山口多聞、大西瀧治郎、小沢治三郎のような人物を、戦後日本は、生んだでしょうか。
(続く)
(『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』より本文一部抜粋)
KEYWORDS:
社会、国、人間関係、自分の将来に
不安や絶望を感じている読者へーーー。
学び闘い抜く人間の「叡智」がここにある。
文藝評論家・福田和也の名エッセイ・批評を初選集! !
◆第一部「なぜ本を読むのか」
◆第二部「批評とは何か」
◆第三部「乱世を生きる」
総頁832頁の【完全保存版】
◎中瀬ゆかり氏(新潮社出版部部長)
「刃物のような批評眼、圧死するほどの知の埋蔵量。
彼の登場は文壇的“事件"であり、圧倒的“天才"かつ“天災"であった。
これほどの『知の怪物』に伴走できたことは編集者人生の誉れである。」
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