下町が生んだファクトリー「テルタ」のニット
東京名品図鑑 1
「一生に一度は手に入れたい!」そんな気持ちにさせる、こだわりの生活用品。いずれも東京生まれ、職人の技が詰まった「メイド イン 東京の逸品図鑑」を紹介していく。第1回目は大正12年創業、テルタの「ニット」だ。
伝統と革新が交錯する下町ニット
ニット業界で「技術のテルタ」と呼ばれているファクトリーが産声をあげたのは、大正時代の本所林町(現在の墨田区立川)。江戸時代の本所地区に住んでいた下級武士は、内職として手編みの襦袢や股引などを作っていたという。機械化が進んだ明治以降も編み物の産地として発展し、日本のニット産業発祥の地ともいわれた場所で、テルタは90年以上の歴史を重ねてきた。
冒頭のカーディガンは、日本のファクトリーブランドを盛り上げていくために開設されたECサイト「ファクトリエ」からの呼びかけに応えて作り上げたもの。19・5マイクロンの極細ウールを使って、薄すぎず、厚すぎずの12ゲージで編み立てたニット地が心地いい。究極にシンプルなデザインを披露しながら、厚みのある高瀬貝ボタン(染めを加えて光沢を抑えたもの)を効かせている。さらに最近では、墨田区のファッションメーカー4社が共同運営するブランド「IKIJI」にも参加するなど、新たな仕掛けにも邁進。歴史ある本所で伝統と革新が交錯する。