閔妃暗殺事件の首謀者は誰か? 朝鮮の内情と日本との関係から捜査する
あの歴史的事件の犯人を追う! 歴史警察 第3回
■この事件で利益を得た人物
そうしたことから、日本が閔妃を暗殺しなければならない理由は見つからない。一部の日本人が加わっていたのは確かだとしても、政府の指示でなかったのは確かであろう。そもそも、首謀者とされる三浦梧楼は、この事件後、日本に召還されて広島監獄署に収監されている。結果的には、証拠不十分として免訴となっているが、事件では何の利益も得ていない。そんな三浦梧楼が、積極的に事件を首謀する理由が果たしてあるのだろうか。
この事件で利益を得たのは、まぎれもなく興宣大院君である。興宣大院君は、閔妃を中心とした閔氏一族との権力闘争にあけくれており、閔妃を亡き者にしようとしていたとしても不思議ではない。しかし、閔妃は国母であり、義理の娘でもある。直接手を下すわけにはいかないから、日本を利用したのではないだろうか。
この事件によって、興宣大院君は、長きにわたって権力争いを繰り広げてきた閔妃を死に追いやったばかりか、閔氏一族を朝廷から排除することに成功した。こうして、興宣大院君が朝廷の実権を握ったものの、長く続いた抗争は国内を疲弊させると同時に日本の介入を許すことになる。高宗は、国号を大韓と改め、皇帝として即位することで日本に対抗しようとしたが、内実が変わったわけではない。高宗の子純宗が第2代皇帝として即位しても、実権は日本に握られたままだった。そして、ついには日本と合併する条約への調印を迫られ、明治43年(1910)、500年以上続いた朝鮮王朝は滅亡することになるのである。