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「あきらめちゃ、だめじゃない?」苦悩する鹿島のキーマン内田篤人

名門・鹿島アントラーズの低迷。ベテランとなって帰ってきた内田篤人の思い

■完敗に送られた「アントラーズコール」

 ディフェンディングチャンピオン・川崎フロンターレを相手に1-4の大敗を喫した鹿島アントラーズ。今季の課題である立ち上がりの悪さを突かれるように、開始5分のオウンゴール。後半開始早々の47分にも失点を喫した。64分に1点を返したものの、1分後にはGKへのバックパスを奪われて、3点目。77分には昌子源が退場し、81分に4点目を献上。文字通り完敗という内容だった。

 試合終了後、ゴール裏へと向かうアントラーズの選手たち誰もが、サポーターからのブーイングを覚悟していただろう。しかし、送られたのは、熱のこもったアントラーズコールだった。

「サポーターの人もブーイングじゃなくて、応援を送ってくれたけど、苦しいのはみんな苦しい」

 内田篤人はそうチームの現状を口にした。
 ACLではJリーグ勢で唯一決勝トーナメント進出を果たしたが、リーグ戦は3勝2分け4敗の11位(4月21日)。首位を走るサンフレッチェ広島とは勝ち点差は14ポイント。そのうえ、ここ1カ月は怪我人が8名にも及んでいる。

 今季加入した内田も第1節出場後、長く戦線離脱を余儀なくされていたひとりだ。
 前節、4月14日の名古屋グランパス戦に先発復帰し、勝利に貢献。立ち上がりの悪癖を払しょくすべく、「前への意識を表現したかった」と試合開始直後から攻撃参加や前線へのパスを送った。先制点を獲得後(前半10分)は、身体を張った守備でゴールを死守している。「プレーでチームをひっぱりたい」という内田らしい姿を見せていた。

 

 しかし、グループリーグ首位攻防となった4月17日のACL水原戦を、若手主体で臨み0-1と惜敗を喫したチームは、リーグ戦、川崎Fと対峙し、またもやその悪癖を見せる結果となってしまったのだ。

「映像でも見ていたけれど、フロンターレは、Jリーグのなかでもパス回しや攻撃のクォリティは群を抜いている。そういう相手と浮き沈みのある、あまりよくないアントラーズがやれば、こういう結果になってしまう部分もあるんだとは思う。

 ある程度、相手がパスを出して、動いていくという部分は予想していたし、しょうがない部分でもある。ただ、前半に失点してしまった状況で、やっぱり『またか』という雰囲気にもなるから。相手に対抗しようとするうちの動きも少ない。『次なにをしようか』という感じで、ひとつひとつのプレーが単発で終わってしまう。それぞれみんな思っているんだけど、みんな頑張っているんだけど、それがかみ合っていない。

 フロンターレは出して動いて(を繰り返していて)、みんながボールをもらうために動いている。そういうシンプルなことだとは思うけれど。俺らの形ってなんだったかと考えたときに、それが作りきれていない。勝てない状況になれば、自信がどんどん無くなっていく。そのうえ試合が続くなかでは、立て直すのは簡単じゃないとは思うから、ここは我慢するしかない。

 戦術もあるだろうし、ちょっと運もあるだろうし、これだけっていう理由じゃない。それを俺がわかっていれば、勝たせられる。俺も30(歳)で、ドイツでもやっているけど、どうやったら勝てるかって答えはないから。我慢しかない。ひたすら我慢、我慢。俺らには4冠という目標がある。だいぶ差があるけど、あきらめちゃダメじゃない? だけど、今は4冠を獲るチームの戦い方じゃない」

次のページ■サイドバックはこういう展開だと厳しい(笑)

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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