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「夫婦喧嘩の時がコミュニケーションのチャンス」と思ってはいけない

精神科医・水島広子先生に聞く、夫婦間のズレを解消するための効果的なコミュニケーション方法

■経験しないとわからないことには言及しない

 ところで夫婦間のコミュニケーションにおいて、これを言っちゃおしまいだ、という禁句のようなものはあるのだろうか。
「人それぞれ人生で背負っているものが違うので、この言葉を使われたら関係はおしまいだ、というのは一概には言えません。例えば、“私はお前の飯炊きババアじゃない!”と毎日怒鳴られながらも夫婦生活を長年続けている夫婦だっていますし。ただよくある例でいうと、主婦の妻に対して“主婦なんだから暇だろ?” みたいなのは、かなり多くの人に共通する禁句ではないでしょうか。主婦の忙しさって、体験しないとわからない。そこを男性が完全に理解するのは難しいからこそ、自分がわからないことに対して不用意なことを言わない方がいい。そういう点では、お互いの実家のことも余計なことは言わない方がいいでしょうね。とてもデリケートな部分ですから、触らぬ神に祟りなし、です」

 小さなことで構わないからお互いの日々の頑張りを認め合って、その上でコミュニケーションをはかることができたら、今よりずっと居心地のいい家庭になるはず。そして、自分たちなりのコミュニケーションのルールを持つことも関係性の向上のために欠かせない。
「よくあるパターンですが、喧嘩の時がコミュニケーションのチャンスみたいになっているのがそもそもダメ。喧嘩の時はどちらも感情的になっているから、建設的な会話にはなりませんし、お互いに意地を張ってしまいがち。もしそこで出てきたテーマがあるとしたら、落ち着いてから話し合った方がいいです。あとは、自分たちに合った話し方のルールを決めるのもいいと思います。基本的に、主語を“私は”にして喋るようにするのがポイントです。そうすれば自分の話しかしないし、人のことを決めつけに入ったりしないで済むので、関係性が悪くならない。“あなたは”と相手を主語にすると、どうしても相手を評価したり、責めることを言ってしまったりする。これは夫婦間に限らず、私たちすべての大人の日常会話にも通用するとてもポジティブなルールだと思いますね」

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水島 広子

みずしま ひろこ

精神科医、対人関係療法専門クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、二〇〇〇~〇五年衆議院議員を務め、児童虐待防止法の抜本的改正などに取り組む。著書に『トラウマの現実に向き合う』『女子の人間関係』など多数。


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  • 広子, 水島
  • 2011.12.22