育成から這い上がった楽天・八百板卓丸。「同じチーム」だった兄との葛藤と絆
聖光学院OBがプロで示す人間力
■プロでも続く兄との絆
「兄貴から手紙をもらうとか、初めてのことだったんで。普段はケンカばっかりしていたんですけど、兄貴が想っていたことがその手紙に書かれていて。読んだときはちょっと感動しましたし、嬉しかったですよね」
この夏、聖光学院は、1971年の磐城以来、福島県勢では43年ぶりに甲子園で3勝を挙げ、ベスト8に進出。卓丸は1番打者として4試合で打率5割3分3厘のハイアベレージをマークし、プロへの扉をこじ開けた。
「まさか、自分がこうなるとは思いませんでしたよ」と卓丸は言う。プロでのキャリアのスタートは育成選手だったが、昨季途中に支配下選手を勝ち取り、そして今季、念願の一軍デビューを果たした。
アピールの日は続く。「チャンスはもらえると思うんで。うん、やるしかないっす」と、卓丸は力強く宣言する。言葉通り、18日のソフトバンク戦では初スタメンを飾り、29日西武戦ではセンター前にプロ初ヒットを放った。
「まだまだこれからですので、気を引き締めて次も打ちたいです」
そんな弟を、兄はいつも見守っている。
「楽天の試合はずっとチェックしていますからね。今度、卓丸に会ったら『しっかりしろよ! 頑張れよ!!』って伝えてください」
そう頼まれた翌日、約束通り飛馬からの伝言を告げようとした。すると卓丸は、こちらの言葉を遮るように教えてくれた。
「昨日、兄貴に会ったんですよね? 電話かかってきました」
伝えるまでもなかった。八百板兄弟の絆。その深さは、今も変わらない。