悩みから開放されて安楽を得るには?哲学者「ピュロン」に学ぶ
天才の日常~ピュロン篇
■ピュロンの生き様から学ぶこと
ピュロンは90歳近くになるまで生きたと言われているが、どのような死に方をしたのか、はっきりとしたことはわかっていない。おそらく彼は、生涯を通して心の平静さを保ったまま、悩み事に煩わされることもない人生を送ったのだろう。
古代と変わらず、現代を生きる私たちも、人生において悩みを抱くのは心の平静を乱される時である。
何のために自分は生きれば良いのか、何故自分の望み通りに物事が進まないのか、あの人はどうして自分の気持ちをわかってくれないのだろうか、努力をしても報われないのは何故か……。
生きていれば期待は失望に変わり、愛情は憎悪へと裏返り、他者への嫉妬や羨望の情は止め処なく湧き出てくるものだ。他者や物事への執着は心をかき乱し、波風を立たせることで悩み事を生み出し、苦しめられてしまうのだ。
そんな心の苦しみを感じた時には、ピュロンのように一度、物事に対する肯定や否定の判断を留保して、あるがままに受け入れてみると良いのかもしれない。他者の気持ちや行動を思い通りにコントロールすることなどできないし、世の中に起きるほとんどの物事も自分の力ではどうにもできない。他者の在り方や身の回りに起きることをただあるがままに受け入れるしかない。そう考えれば、次第に心の平静を取り戻し、悩みから脱却して、安楽の日々を送れるようになるのではないだろうか。