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脳科学の分野から考える夫婦間コミュニケーション 男女の違いを受け入れることが鍵

京都大学 霊長類研究所の中村克樹先生インタビュー(前編)

育児を通した夫婦関係について、「夫」目線で考える本特集「『イクメン』って結局なに?」。ここまでの記事の内容にもあった通り、夫婦間のコミュニケーションを良好にするうえで、やはり互いの違いを理解することは必要不可欠なようだ。
そこで今回は、脳科学の分野から男女の違いについて考えてみたい。

◆男と女は、そもそも胎児の頃から違う

 

 幸せそうで、誰もが羨む仲睦まじいカップル。そんな彼らが結婚し、子どもを産み育てていく年月の中で、いつしかコミュニケーションがうまく取れなくなり、相手との間に大きな溝ができ始める……。決して珍しい話ではないからこそ、なんとかして負のスパイラルを食い止めたい。今回、男と女のすれ違いの原因を脳科学の分野から探るため、京都大学 霊長類研究所 神経科学研究部門 高次脳機能分野 教授の中村克樹先生のもとを訪ねた。そもそも男性と女性の脳に“違い”はあるのだろうか。

「もともと”男と女には色々と差がある”、ということは言われています。もちろん、すべての専門家が賛成しているというわけではないですが、私自身は“差がある”と思っている1人です。例えば、喋るということは圧倒的に女性の方が得意。久しぶりに友達と会って気がついたら3時間話し込んでいた、みたいなことって女性にはよくあるけれど、男性には珍しいですよね。麻雀とか何かをしながら、というのはあっても、喋るだけで3時間というのは、私自身も想像がつかないです(笑)。他の例では、地図を見て現在地と目的地を瞬時に把握するなど、空間位置の処理は男性の方が得意といわれています」

 さまざまな分野において、男女それぞれが得意なことと不得意なことがあるのは一般的事実。「それはあくまで単純な能力の違いであり、男女の優劣や差別と混同して捉えるのは避けたいですね」と中村先生。
「お母さんのお腹の中にいる胎児は、すべて最初は女なのです。ところが発達の過程でテストステロンというホルモンのシャワーを浴びた場合のみ、男の体になって生まれてくる。そういった性別が分かれる過程は、基本的にヒトも他の動物も同じです。生まれた後の過ごし方でも色々変わってくるのですが、例えば男の子は電車や車などの動くものが好きな子が多いし、女の子はそれに対して人形遊びが好きな子が多い。全般的にそういう特徴がある、ということが言えるんですね。そのように、すでに幼児の頃から男と女の違いが色々と出ている。もちろん思春期以降は、男はヒゲも生えて声も野太くなって体格もゴツゴツしてくる。女性は丸みを帯びてくるという身体的な差も顕著に出てきます。ちなみに脳の断面の画像を見ていくと、ある部分の形、大きさなど、男女に明らかな違いがあるんです。脳のいろんな場所の結びつき方、連絡の仕方というのを見ても、男は右脳と左脳のそれぞれの中での結びつきが強く、女性は右脳と左脳そのものをつなぐ結びつきが強い。そんな風に、脳そのものもいろんなところが違っています。だから、男と女が同じことをするのは決して得策とは言えない。男と女は元々が同じではないので、それぞれの能力を生かした違うことをして、うまく役割分担していくのが元々の理想形だと思います」

 
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