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控えめ過ぎる二十一箇条要求

2ndシリーズ⑨「平和ボケ」日本の幕開け

加藤高明(1860年~1926年)

 ただし、日本外交史上の汚点といわれる理由が、別のところに確かに存在します。時の外務大臣・加藤高明が袁世凱と交渉しているときに、袁世凱が「すみません、私の立場がなくなるんで、最後通牒の形式で突き付けてくれませんか。そうしてもらえたら仕方なく、ということで言い訳が立ちますんで」と言いだします。そこで加藤外相は、お人好しにも袁世凱の望み通りに最後通牒を突き付けました。

 すると袁世凱はプロパガンダに出ました。秘密にすると話が通っていたはずの七箇条の希望の部分を「最後通牒でこんなことを言われた」と国際社会に公開したのです。日本は五項目に分けて要求したのですが、その中で第五項が七箇条の希望にあたっていて、それで一般的には「第五項問題」とも言われます。

袁世凱(1859年~1916年)

 秘密交渉を逆手に取られてまんまとプロパガンダに利用されたという点で、まったくの汚点です。明治生まれの外交官にして外交史研究家の鹿島守之助氏の大著に『日本外交史』(鹿島研究所出版会、一九六五年)全四十巻があります。幕末から始まり、淡々と史料を紹介しているだけなのですが、二十一箇条要求の項になったとたん、突如として加藤外相に対する筆誅【ひっちゅう】を加え始めています。

『学校では教えられない 歴史講義 満洲事変 ~世界と日本の歴史を変えた二日間 』より抜粋)

次回は、シリーズ⑩日本外交史の金字塔!石井菊次郎とロンドン宣言加入の価値(最終回) です。

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倉山 満

くらやま みつる

憲政史研究家

1973年、香川県生まれ。憲政史研究家。

1996年、中央大学文学部史学科国史学専攻卒業後、同大学院博士前期課程を修了。

在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員を務め、2015年まで日本国憲法を教える。2012年、希望日本研究所所長を務める。

著書に、『誰が殺した? 日本国憲法!』(講談社)『検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む』(光文社)『日本人だけが知らない「本当の世界史」』(PHP研究所)『嘘だらけの日米近現代史』などをはじめとする「嘘だらけシリーズ」『保守の心得』『帝国憲法の真実』(いずれも扶桑社)『反日プロパガンダの近現代史』(アスペクト)『常識から疑え! 山川日本史〈近現代史編〉』(上・下いずれもヒカルランド)『逆にしたらよくわかる教育勅語 -ほんとうは危険思想なんかじゃなかった』(ハート出版)『お役所仕事の大東亜戦争』(三才ブックス)『倉山満が読み解く 太平記の時代―最強の日本人論・逞しい室町の人々』(青林堂)『大間違いの太平洋戦争』『真・戦争論 世界大戦と危険な半島』(いずれも小社刊)など多数。

現在、ブログ「倉山満の砦」やコンテンツ配信サービス「倉山塾」(https://kurayama.cd-pf.net/)や「チャンネルくらら」(https://www.youtube.com/channel/UCDrXxofz1CIOo9vqwHqfIyg)などで積極的に言論活動を行っている。

 

 

 

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