手作り石けんが肌だけでなく、お財布や心にも優しい理由
手作り石けん作家・井出順子先生が提案する美容の秘訣③
■自分でつくれば大幅なコストダウンになる
そこで、もし石けんの良さを知ったのなら自分で作ってみることをお勧めします。自分で同じ製法の石けんを作れば大幅なコストダウンを見込めるからです。道具や材料を揃えるという準備が必要ですが、それはお菓子作りやお料理と同じこと。しかも、そのメインの材料はキッチンでも使える栄養たっぷりの植物オイル。石けん作りの他に調理にも使えて、石けん以外の手作りコスメの材料や、簡単な肌の保湿オイルにもなります。石けんではちょっと落ちにくいポイントメイクは、植物オイルを直接なじませて落とすこともできます。汎用性の高い自然の恵みの植物オイルはコスパのいい優秀なアイテムなのです。
さらに自分の肌のコンディションに合わせて石けんを作ることができるのも、自分で手作りをする大きなメリットの一つ。拙著の中でも季節に合わせた石けんのレシピと作り方をご紹介しています。市販のものから選ぶよりも、バリエーションがぐんと広がって楽しみも倍増。一人一人肌のコンディションや好みは違いますし、季節によっても変化します。毎日使う石けんが自分の手で作り出したもので、しかも肌にぴったりだなんて、これは想像以上の満足感を味わえるはずですよ。
その満足感に加えて、手作り石けんが何より心に効く要因があります。それは石けん作りの過程で、私たちの「五感」を刺激する要素がたくさん散りばめられていることです。例えば、植物オイルの色や質感、香り付けのためのアロマオイルの豊かな芳香、トロリとした石けん生地を混ぜるときや、固まった石けんをカットするときの感触、初めて泡立てたときの泡立ちの質感や肌にのせた時の感動。自分で作ったものに対しての愛情もあるため、なおさら感じることに意識を向けやすいのです。
実は五感を刺激して活性化することは、人生を豊かに生きる上でとても大事なこと。ところが、目の前にあるものを感じて、味わうということを現代人はあまりにも忘れがちです。例えばコーヒー一杯を自分の感覚を使ってじっくりと味わってみる、一人で食事をする時もスマホをいじらずに食べ物の味や食感をちゃんと味わってみる、目の前の景色や肌をなでる風を感じてみる。とてもシンプルなことです。でも意識をしていないと、依存しやすい刺激に流されて今ここにあるものと向き合うことを疎かにしてしまいます。これは自分の感覚を放棄して鈍らせることになります。
自分の感覚が鈍くなるということは、自分は何が欲しいのか、何が好きで、何を必要としているのか、という私たちの体に備わった原始的なアンテナが鈍るということでもあります。このアンテナは、人生の一瞬一瞬の選択において、自分に最適な答えを教えてくれる大事なもの。いま流行りのAIや、大衆向けの外側の情報からは導き出せないような自分だけの優秀な機能です。
「石けん作りを通して生活がとても豊かになった」という声を本当にたくさん耳にしてきました。スキンケアが楽になって肌がきれいになったのはもちろん、それ以上にきっと、野性の勘ともいえる自分の感覚が立ってきたという証拠ではないでしょうか。自分の肌に何が必要かを感覚で感じることができているのですから。その感覚があれば、外側に窓わされずに自分の心を大事に生きることができます。人間関係やパートナーシップだって好転するかもしれませんね。自分らしく自信を持って生きていくことにつながっていくはずです。
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