成功体験のある人間ほど失敗するのはなぜか?【中野剛志×適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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成功体験のある人間ほど失敗するのはなぜか?【中野剛志×適菜収】

「小林秀雄とは何か」中野剛志×適菜収 対談第4回(最終回)

 

■コロナの最も怖い症状は「偽物を暴き出すこと」

 

中野:小林秀雄って確か1983年に死んでますよね。その年にちょうど浅田彰氏の『構造と力』が出て、ニュー・アカデミズムというブームが起きたそうですね。ある編集者に聞いたのですが、小林が生きていたときって、小林の目が怖くて、下手なこと書いて厳しく批判されたらどうしようということで、論壇に緊張感があったらしいですね。当時の言論人たちは、小林の厳しい目を意識しながら、緊張感をもって文章を磨いてきたのでしょう。ところが、小林が死んじゃったら、みんな緩んで、好き勝手なことを書くようになり、その頃から論壇がダメになっていったのではないでしょうか。

 福田恆存と三島由紀夫が、三島が死ぬちょっと前ぐらいに対談をしてたのを、ある編集者からもらって読んだことがあります。そのとき二人は、高坂正堯とか、要するに、その後「保守」として台頭する若い論客たちに対する違和感を吐露していました。三島、小林、福田といった世代の保守と、80年代以降の保守って、どうもやっぱり質的に相当違うみたいですね。何かがすごく違うみたいで、三島と福田は違和感を覚えている。小林は、あまりそういうことをしゃべっていないようですけどね。

 

適菜:一つ言えるのは、文学者か、政治学者かの違いがありますよね。三島、小林、福田は文学者だったけど、高坂正堯は政治学者でしょう。文学の領域って、保守が扱う領域と結構重なりますよね。要するに簡単に言語化できないものや、近代人に見えなくなっているものに価値を見出す。単に、地政学であったり、パワーバランスの問題を扱っている連中とは、本質的には違うと思いますけどね。それでも高坂正堯の時代はまだ節操というものがあったと思います。今ではネトウヨのブロガーレベルの連中やカルト勢力、陰謀論者が「保守論壇」を形成しているわけですから。

 

中野:なるほど、それは興味深い。そのズレが違和感の理由なんでしょうね。

 

適菜:さっきの小林秀雄の「目が怖くて」じゃないけども、今でもそういうことは往々にしてある。叱ってくれる人、意見を言ってくれる人、忠告してくれる人が呆れ果てて離れていき、周辺が信者やイエスマンばかりになると、歯止めが利かなくなり、暴走していく。新型コロナは言論人の人間性まで暴き出したのです。

 

中野:本当ですね。恐ろしい病気ですね。やっぱり、コロナは、インフルエンザよりはるかに怖い(笑)。単なるアジテーターに成り下がった言論人もいるし、大学の権威を落としてしまった学者もいますね。

 

適菜:新型コロナの日本製ワクチンの開発は急務ですが、バカやデマゴーグを封じ込めるワクチンも社会全体で作っていかなければいけませんね。

 

(終わり)

 

著者紹介

中野剛志(なかのたけし)

評論家。1971年、神奈川県生まれ。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“TheorisingEconomicNationalism”(NationsandNationalism)でNationsandNationalismPrizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『日本経済学新論』(ちくま新書)、新刊に『小林秀雄の政治哲学』(文春新書)が絶賛発売中。『目からウロコが落ちる奇跡の経済学教室【基礎知識編】』と『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)が日本一わかりやすいMMTの最良教科書としてベストセラーに。


 

適菜収(てきな・おさむ)

作家。1975年山梨県生まれ。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム近代的人間観の超克』(文春新書)、『安倍でもわかる政治思想入門』、清水忠史との共著『日本共産党政権奪取の条件』、『国賊論 安倍晋三と仲間たち』『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』(以上、KKベストセラーズ)、『ナショナリズムを理解できないバカ』(小学館)など著書40冊以上。「適菜収のメールマガジン」も配信中。https://foomii.com/00171

 

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なかの たけし/てきな おさむ

中野剛志(なかのたけし)

評論家。1971年、神奈川県生まれ。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“TheorisingEconomicNationalism”(NationsandNationalism)NationsandNationalismPrizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『日本経済学新論』(ちくま新書)、新刊に『小林秀雄の政治哲学』(文春新書)が絶賛発売中。『目からウロコが落ちる奇跡の経済学教室【基礎知識編】』と『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)が日本一わかりやすいMMTの最良教科書としてベストセラーに。

 

 

適菜収(てきな・おさむ)

作家。1975年山梨県生まれ。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム近代的人間観の超克』(文春新書)、『安倍でもわかる政治思想入門』、清水忠史との共著『日本共産党政権奪取の条件』、『国賊論 安倍晋三と仲間たち』『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』(以上、KKベストセラーズ)、『ナショナリズムを理解できないバカ』(小学館)、最新刊『コロナと無責任な人たち』(祥伝社新書)など著書40冊以上。「適菜収のメールマガジン」も配信中。https://foomii.com/00171

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